副業で気になるのが確定申告。会社にこっそり副業をしていたけど、住民税の通知でばれるのは心配…。本記事では、そんな方のために、副業で確定申告が必要になるケース、ならないケースについて、確定申告のやり方・手順について解説します。
副業における所得の種類
副業における確定申告について解説する前に、まず知っておく必要があるのが所得の種類です。副業とひとくくりにいっても、株、Webデザイナー、コンビニのアルバイトなど、労働形態によって所得(収入)の計算方法や考え方は変わります。
給与所得
コンビニやスーパーなど、一般的にアルバイト・パートと呼ばれる副業をする場合、給与所得の扱いになります。ただし、人数の少ないベンチャー企業の場合は、業務委託契約で雑所得扱いにしていることもあるので、確認が必要です。
雑所得
雑所得とは、所得税法で分類される9つの定義いずれにも当てはまらないその他の所得の総称を指します。ネットオークションやメルカリなどのフリマアプリで得た収益、執筆における原稿料、アフィリエイトによる収入などが雑所得に該当します。ただし、その所得が雑所得なのか、次に説明する事業所得なのかについては、総合的に判断されるので注意が必要です。例えば、原稿料もアフェリエイトの収入も反復継続的に専業で行うような場合には事業所得となります。
事業所得
製造業や小売業、サービス業、タレント活動、競馬の騎手などが事業所得に該当します。
不動産所得
土地や建物などの不動産を貸すことで得られる所得ですが、投資用マンションによる配当や、スペース貸しやAirBnbなどの民泊収益ビジネスも、一般的には不動産所得に該当します。
配当所得
配当所得とは、株式の配当金、投資信託の収益分配にかかる所得のこと。FXは、配当所得に含まれず、雑所得扱いになるので注意しましょう。
副業で確定申告するのはいくらから?
ここでは、副業で比較的多い「給与所得」と「雑所得」に焦点を当てて解説いたします。
給与所得の場合
アルバイトやパートの収入が年間で20万円超となった場合、確定申告の必要があります。会社員の場合は、会社が年末調整を行いますが、副業における給与所得は原則、自分で確定申告の手続きをする必要があります。
雑所得の場合
メルカリなどフリマアプリで得た収益、記事執筆における原稿料など、合計所得が20万円超の場合、確定申告をする必要があります。
収入と所得の違い
皆さんが、勘違いしがちなのが収入と所得の違いです。給与と賞与を合算したものが「収入」にあたります。一方、「所得」は売上から経費を引いたものを指します。つまり、売上が年間に100万円でも、経費が90万円なら所得は10万円となり、確定申告は不要となります。
20万円以下であっても、住民税の申告は必要
20万円以下なら、確定申告の義務は発生しませんが、住民税は1円でも所得または収入がある限り、申告義務が発生します。所得税は税務署ですが、住民税は各市区町村が管轄しており、市役所で申告手続きを行う必要があります。
副業における確定申告のやり方・手順
ここからは、副業における確定申告のやり方・手順について解説いたします。
青色申告と白色申告について
まず、申告方法には「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告では、複式簿記で取引を記帳し、賃貸対照表などの作成が必要となります。また、青色申告で計算するには、「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。手間は増えますが、65万円の所得控除が受けられ、節税効果の恩恵を受けられます。一方、白色申告では税務署へ事前の申請書類を提出する必要はなく、エクセルなどで取引を集計する程度で簡単に申告ができるため、副業を始めたばかりの人におすすめです。ただし、青色申告のように特別所得控除を受けることはできません。
収入と経費を記帳する
自分が副業で得た収入と、副業で使った経費を記帳します。白色申告の場合は、エクセルなどによる簡易的な単式簿記で、青色申告の場合は会計ソフトなどを使った複式簿記が必要となります。また、自分がしている副業がどの所得にあたるかで、計算方法が異なるので、事前に把握しておきましょう。
必要書類の用意・記入
給与所得、雑所得ともに、源泉徴収票、確定申告書A、マイナンバーカード、身分証のコピー(年末調整で対応できない控除がある場合は、確定申告書Bも)等の書類が必要となります。
雑所得の場合、支払調書に記載されている所得額を雑所得の欄に記入します。なお、支払調書は源泉徴収票のように送付義務がありません。送られてこない場合には、支払先に発行を依頼しましょう。手に入れられない場合には、支払われた金額から源泉徴収前の金額を割り戻し計算する方法もあります。
また、給与所得、雑所得の場合ともに、20万円以下の場合であっても還付申告を行えば払いすぎていた税金が還付されます。忘れずに申告しましょう。
税務署へ提出
税務署へ書類を提出する方法は、「e-tax」「郵送」「FAX」「訪問」の4つがあります。それぞれメリット・デメリットがありますが、「訪問」は現地に税務署のスタッフもいて、不明点を聞きながら作成を進めることができ、初心者におすすめです。しかし、その分申告待ちの人も多く、作成・提出完了までに時間がかかります。
e-taxは、政府が推進している提出方法です。2021年3月申告分からは、e-taxによる申告をしなければ、青色申告控除額の65万円が55万円に減額されることが決まりました。マイナンバーカードの作成と、カードリーダーの購入、利用者識別番号の取得など、事前準備が煩雑ではあるものの、一度準備をしてしまえば、Web上で簡単に申告が行えます。
副業の確定申告でよくあるQ&Aまとめ
副業で確定申告する場合、経費はどこまで認められる?
副業で最も難しいのが経費の考え方です。まず経費の基本的な考え方は、その経費が仕事に直結しているかどうかです。例えば、ライターやプログラマーとして副業をされている方であれば、パソコンや専用ソフトの購入は必要経費になりますし、また副業のために借りているオフィスも経費として計上できます。副業とは全く関係のない飲み会、プライベートの旅行における交通費はもちろん対象外です。払い込む税金を安くしようと、不正に経費計上したことが発覚した場合、追徴課税等の処分の対象になるので注意しましょう。
副業で確定申告をするとばれるの?
最も多いのが、住民税の金額の増加により会社側に副業がばれるケースです。これは、住んでいる市区町村に届出を提出し、普通徴収(自分で納付を行う方法)に切り替えれば回避できますが、ただし、市区町村によっては普通徴収への切り替えを認めていないことも。この場合、副業先に「普通徴収への切替理由書」を提出してもらうなどの対策をとるとよいでしょう。
アルバイトと業務委託で副業をしている場合の計算方法を知りたい
パート・アルバイトと業務委託の両方で副業をしている場合は、それぞれの所得を足して20万円超であれば確定申告が必要となります。
まとめ
20万円を超えないものに関しては、確定申告の必要はありませんが、住民税の支払い手続きは必要になります。また、還付申告を行えば、払いすぎた税金が戻ってきますので、面倒と思わずに確定申告を行いましょう。
【監修】
税理士法人新正会計
税理士 奥山成美