【プロジェクトレポート】酒造メーカーEC事業におけるオンライン販売事業戦略強化

プロジェクトの背景と経緯


本案件は、酒造メーカーのクライアント企業様が、自社オンラインショップを立ち上げたものの、自社オンラインショップ(EC)における事業活動の難しさに直面し、外部の専門知識が必要と判断したことがきっかけで受諾させていただくことになりました。

お客様は、ECサイトの立ち上げから1年が経過しても手探り状態で運営していることに困っていらっしゃいました。
社内にECサイトの専門人材がいないため、売上拡大のための道筋を描くことが目標でしたが、そもそもどのような年間計画を策定すべきなのか、施策の妥当性はどうか、計画したものを実行できるのか、実行した後の効果検証は適切にできるのか……。EC事業全体の進め方に不安を持ってらっしゃいました。

特に、本案件の企業様は、100年以上の歴史を持つ老舗酒造メーカー様のため、これまでの経営を通じて、事業計画の策定や目標設計については、社内体制で十分に対応することができていました。しかし、EC事業における課題の深掘りや、課題に対する効果的な打ち手、さらには実行した施策に対する評価については、専門外の領域でした。
特にECサイトは、立ち上げ期には、「サイト完成」という明確なゴールが存在しますが、その後、EC売上を伸ばすためには正解のない道筋を辿る必要があります。

今回は、自社ECサイトでしたので、集客ハードルが非常に高いことが課題でした。また、安定的な売上を作っていくことができるかどうかの懸念がありました。
この課題に対処すべく、外部からの経験豊富な専門人材を活用することを決断しました。経験者による専門的なアドバイスと協力により、より効率的で迅速なECサイトの運営や売上向上に向けた道筋を描くことができ、目標達成の近道を見いだせました。

また、ECサイト担当者は、手探り状態での運営から脱却し、スキルの向上を目指す中で、外部の専門人材の協力を得ることで、育成のスピードアップも実現しました。

マッチング人材


企業様に求められた人材は、インターネットを通じた商品やサービスの購買活動(EC)に豊富な経験があり、実際のお客様との関係や対話を管理するための技術
(CRM)の両方に強みを持つ専門家でした。また、プロジェクト推進力があることや、先方責任者との相性も良いことが求められていました。

実際に外部人材としてプロジェクトに参画した人材は、ECやCRM領域の経験が豊富な方でした。新卒から、大手広告代理店に入社し、TV通販事業社に対し、メディアプランニング、クリエイティブ制作、コールセンター支援を実施し、CRM事業部立ち上げも担当しました。

そこから、ECコンサル企業に転職し、自社ECに加え、楽天、Yahoo!などの販促コンサルティングや、EC立ち上げ支援も実行しました。2018年より、フリーランスとして、通販企業に対してのCRMコンサルティングの提供や、通販支援会社(システム、広告、など)の顧問として、通販事業者を支えている人材です。これまで、100社以上のECを見てきたこともあり、ECにおける上流から下流まで幅広く経験してきたことが、企業担当者としても安心できる1つの要素でした。

具体的なプロジェクトの進行

本案件は、当初半年契約として、プロジェクトをスタートさせましたが、伴走にご満足いただき、結果として2年7ヶ月が経過した現在も伴走支援中のプロジェクトです。下記のようなスケジュールで事業をすすめています。

・最初の半年:ECチームへの伴走

・翌1年:ECチームへの伴走・中期計画の策定

・翌1年:EC責任者(マネジャー)への壁打ち支援

・現在:EC責任者(マネジャー)への壁打ち支援+体制強化支援

まず、最初の半年のプロジェクトでは、【現場分析→課題整理→CRM施策開発→実行&評価】のステップで進めました。現場分析では、データは所有していても、EC事業においてどのように解釈し、活用すべきかが見えておらず、課題整理に向けて、データ分析やディスカッションを進めていきました。

洗い出した課題をもとに施策実行を進めていく際にも、社内担当者ごとのスキルやECレベルを鑑みながら、伴走していきました。

その後、ECチームにおける日々の業務レベルが底上げされた中で、中期計画の策定をしていきました。数字を並べるだけではなく、どのようなECショップにしていくのか、攻めのマーケティング施策を検討し、数字との整合性を検討する必要があります。加えて、EC事業の「守り」である、仕組み・商品管理・物流・発送・お客様対応といった面も、最適な体制を整えられるよう、議論を重ねました。

現在は、EC責任者様との壁打ちを通して、日々発生する細かな EC業務の悩み解決から、中長期計画に沿った進捗状況の確認などを実施しています。実際に現地を訪問し、対話を重ねたり、他社の物流倉庫を共に訪れ、社内体制の改善・強化に充てたりするなど、引き続き、EC事業で伴走させていただいております。

直面した課題とその克服

直面した課題としては、大きく3点あります。

1点目は、酒類のEC販促についてです。

酒類のEC販売では、法規制の遵守や、瓶などの使用や贈答用商品が多いため適切な物流管理が最大の課題です。さらには、消費者へのアピール方法も独自の工夫が必要です。通常の店頭購入では五感全てを使って商品を体感できますが、ECではその利点を享受することができず、視覚でしか商品を知ることができません。

商品の魅力を伝える工夫が不可欠です。消費者の好みやトレンドを理解し、ターゲット市場に適切にアプローチすることも重要な要素です。外部の専門人材が入ることで、様々な角度からのディスカッションが可能となり、社内ではまとまりきらない課題に対しても効果的な議論が行えました。

2点目は、チームメンバーの育成とチーム力の底上げです。

当社が直面していたもう一つの課題として、戦略を立案することはできても、その実行が難しいという課題がありました。特に目標数値の達成に向けた具体的な道筋が見えていなかったことが原因です。この課題に対処するため、隔週程度の定例の打ち合わせを導入し、進捗確認や困りごとの解決に努めました。社内のコミュニケーションにおいても、Slackを導入するなどして、プロジェクトを円滑に進めることに取り組みました。

ECの担当者は、季節ごとの販促施策の策定や実施、商品の魅せ方の検討、特集ページの作成、ユーザーボイスの収集と分析、DMやチラシの作成など、多岐に渡る業務を遂行しなければなりません。そうした施策を推進する際に、スキルや業務内容だけでなく、担当者自身が意欲的に取り組めるのか、社内でのコミュニケーションで不都合がないか、そうした人としての感情の側面も非常に重要になります。定例でミーティングを置くことにより、マッチング人材の方は、そうしたモチベーション管理の面でも協力的に関わってもらい、結果としてチーム全員が前向きに目標に向かっていくことができました。

3点目はプロジェクト全体の進行についてです。

プロジェクト進行の課題としては、フェーズごとに企業が持つ課題感や目指すべき方向性が変わってくることがあります。特に、外部人材活用では、長期間に渡り、専門人材に同じ課題に対して伴走することは必ずしも健全とは言えません。

戦略策定をすれば、PDCAを回すためのフォローをし、合わせて人材の育成も検討する必要があります。メンバーが自走できるようになれば、次の課題感が見えてきます。

弊社からは、都度の打ち合わせを実行したり、契約更新のタイミングで半年ごとに方向性の議論の場を設けたりするようにしました。こうした議論の場を設けることで、意思決定を円滑におこない、プロジェクトの推進方法と重点的な施策について、お客様と目線を合わせ続けることができました。

最終的な成果

この3年ほどのプロジェクトを通して、年間売上計画の目標達成に向けて大きく前進しました。現在もプロジェクトが続いていますが、今後も企業様の目標の実現を伴走していきます。

これまでの定性的な成果としましては、プロジェクト当初のミッションとして掲げていた、以下の5つに対して大きくレベルを上げることができました。

・新しいサービスの設計と魅力の向上

・リピーターの創出(CRM)

・売上トップラインの引き上げ(新規獲得and既存顧客育成)

・適切なKPI設定と管理

・最適な運用体制の構築とスタッフのスキルアップ

加えて、チームメンバーの成長(ECスキルの蓄積)だけでなく、EC責任者自身のスキルアップ、そしてPDCA体制の構築と内製化まで実行することができました。

プロジェクト開始前より、ECチームとしての意思決定を現場マネジャーに移管する決定をしてくださっていたため、スピード感を持ちながら進めることができました。

そして、プロ人材もコンサルタントという立場ではなく「一緒に実務を行う」というマインドセットでプロジェクトをスタートとしたため、関係者全員が良好な関係で課題をクリアしていくことができました。

今回の記事が、現状、酒類のECを運営している事業者様、今後D2C事業に挑戦しようとしている企業様のご参考になれば幸いです。

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