地場産業が元気な日本を目指して【人生を賭けた挑戦】

トレジャーフットメンバーの原体験を探索するコラム「Treasurefoot = ⚪︎⚪︎」田中祐樹編

■田中祐樹
株式会社トレジャーフット 代表取締役社長。1986年生まれ、京都出身、6歳と3歳の2児の父。新卒で株式会社セプテーニ入社、マーケティングの力をローカルで活かすために沖縄県へ移住。地域密着メディアを運営する株式会社パムローカルメディア代表取締役社長に就任し、地域課題の解決に奔走。その後、株式会社ベネフィット・ワンにてサービス開発部部長代理 兼 新規事業開発の責任者を経て、2018年3月に株式会社トレジャーフット設立。日経新聞社「稼げるフリーランスの法則」著者。

副業する人で地方創生を実現したい。しかし誰一人理解してくれなかった。

トレジャーフットを起業したのは2018年。都心に多く存在する高度IT人材を副業させて、彼らの力で地方の中小企業を活性化させたい、その思いで会社を設立しました。今思うと、よくここまでやってこれたな、という出来事も多かったのですが、現在も急成長を遂げながら歩みを進めています。

もともと私自身は京都出身で、新卒では大阪で働き、その後沖縄に移住しました。沖縄時代は、子会社経営をしており、まさに「地方で働く」ということを肌で感じていました。その際に、地方での採用難に直面したことが、今でも強い記憶として残っています。当時は10年ほど前になりますが、採用難という課題に対し、都心の優秀なIT人材に、副業・リモートで仕事を受けてもらい、観光WEBサービスを作ってもらっていました。その形式が、今のトレジャーフットのビジネスモデルの原型となります。

宝物は足元にあることに、自分が気がつけるかどうか

トレジャーフットの社名の由来は「地域の宝物は足元にある」です。宝と足でトレジャーフット。

私は、学生時代から、人口減少で衰退をしていくとされる地方の問題をテーマに起業しようと思っていました。普段の生活でも情報収集をしながら、特に、地方にある中小企業がどのような未来を描き、経営していくのか、経営者の考えに興味を持っていました。

そこで気づいたことは、「東京に倣って発展させていく」といった考えや、「東京への憧れを持ちながら進めていく」といった思いを持つ人が多いということ。こうなると、資本主義の経済合理性のみを追求してしまい、今の日本の地方都市に多い景色が作られてしまいます。どの駅に降りても同じお店があること、地方のロードサイド店がどこでも同じということ・・・個性のない地域になってしまいます。もちろん、個性のない地方が一概に悪いとは言えませんが、各地方ごとの個性を色濃く残した未来の日本であることの方が、より豊かではないかと考えています。多くの選択肢を持つことが、よりより未来に繋がるのではないでしょうか。

正社員を雇わなくても、会社は成長できる

改めて、トレジャーフットについて述べていきます。トレジャーフットの事業を簡単に説明すると、『副業、兼業、フリーランス、プロ人材と業務委託契約でチームを作り、リモートワークを中心とした支援スタイルで、地域関係なく、どこでも高度な業務支援を受けることができる』と言うことができます。

こうしたサービスで5年間の事業運営を行い、延べ数百社のクライアントを支援してきました。5,000人を超えるフリーランスの方々との出会い、共に仕事を進めた経験から、実践型フリーランススクール『はたふり』という事業も立ち上げ。そうした実績を活かし、昨年には、日本経済新聞社から書籍の出版も行いました。今後も、会社の経営理念、ビジョン、バリューを大切にして突き進んでいこうと考えています。

常識の働き方として「こうあるべきだ」を疑え

「経営理念」という言葉が出ましたが、トレジャーフットの経営理念は「私たちは新しい働き方を創造し、地場産業の発展に貢献する」です。私自身、会社の経営者として、この理念を大切にしながら、そして自分自身も実践しています。一方で、「新しい働き方」の対義語として挙げられるのは、従来の正社員や、終身雇用といったキーワード。また、満員電車での出勤や、拘束時間で縛ることなども、私としては旧型の日本的な働き方だと考えています。

トレジャーフットの正社員は、フルリモート、フレックス制です。
これは私が会社を設立し、就労規則を作る際、社労士と相談しながら決めた働き方です。「正社員雇用とフリーランスで働く人のいいとこ取りができるような就労規則にしたい」と伝えてつくったものです。社員は複業OKで、もちろん二拠点居住もOK。なかには漁師と兼業しているメンバーもいます。

私自身も、「こうあるべきだ」という固定概念をなくして働いているので、子供の保育園の送り迎えなどもこなし、子育ても全力で取り組みながら、経営をしています。経営者だったら家庭をないがしろにしていいかというと、そんなことはないと考えます。全員に等しく豊かなワークライフバランスを実現してほしい、そう思って毎日の経営をしています。

慎重で真面目なチャレンジャー

この記事は自分自身とトレジャーフットを語る記事なので、私個人の話を少しさせてもらいます。

私は、「慎重で真面目」という性格が自分のベースになっていると思います。年上の経営者と会食をした際には、『真面目で面白くない』と言われたこともあるくらいです。そんな私ですが、人と違う部分があります。

それは、チャレンジすることが大好きであるということ。

成功が約束されている道よりも、ワクワクする道を選ぶことが好きです。誰もやったことのないことに挑戦したい。周りからすると、真面目で慎重なのに、よくわからないことにチャンレンジし続けているという、わかりにくい人間なのかもしれません。

しかし、それは私のこれまでの人生経験からくる生き方で、自然なことだと捉えています。私は小学4年生のとき、父を事故で突然亡くした経験があります。その時感じたことは「人の人生には終わりがある」ということ。その日から、今日に至るまで、いつ死んでもいいように全力で生きようと思い、生活してきました。なので「明日死んでも満足できるか」と自問自答すると、どうしてもチャレンジをするという選択肢を取ってしまうのです。笑

「たら、れば」言ってないで

そんな幼少時代でしたが、私の性格を決めた原体験として、父の死後の「周囲の人たちの様子」という観点がありました。突然亡くなったものですから、周りの人たちは『もしもう数年間生きていたら…』『もし今も元気に一緒に生活できていれば…』と言っていました。亡くなったことに対して、「たら、れば」で考えを巡らせているという、そんな情景を目にしてきました。私は、子供ながらに、『「たら、れば」言わないで、今を考えようよ』と、心の中でそう思っていました。

人生は今しかない。

人生を謳歌するためには「たら、れば」ではなく、今すでに人生の宝物は持っていると考え、歩んでいくことが大切だと思っています。そんな性格もあって、地域の宝物も、人生の宝物も足元にある、という、トレジャーフットの社名に繋がっています。

郷土愛から作られる新しい地方

トレジャーフット6期目、次なる挑戦として、「地域のことは、地域の人がすることで、地域内でお金やスキルが循環する」と考え、新たな実行プランを作成しています。

・各地域ごとにフリーランス組織を形成し、
・副業・兼業・フリーランスの方が、地場産業に入り込む
・戦略設計や高度な支援は、都心部に多いハイスキル人材が実施しても良いが、
・地元の複業で実行部分を取り掛かる

そのような体制を作ることで、地域内での循環を高めていきます。お金やフリーランス人材のレベルも、そして地域内で自走できる度合いも高めていきます。強い地方、強い地場産業、強い地元人材を作り上げていきたいです。

志ある仲間を集めたい、まずは東海エリアを中心に立ち上げを行っていますが、47都道府県すべて取り組みたいので皆さんの力が必要です。この記事を読んでくださってるあなた、トレジャーフットを何かの拍子で知った方など関わる全ての方と、トレジャーフットのビジネスで、人口減少社会における新たな活路を共に創り出していければ嬉しいです。

次世代に選択肢の多い豊かな日本を残したい

いま、私は、この最後の文章を、早起きした寝室で執筆しています。朝日が差し込み、うっすらと2人の子供たちの寝顔が見えます。改めて、私は「自分の人生の時間を、より良い未来のために全てを捧げよう」と思います。人口減少は悪いことばかりでははないはずです。これまでの日本にこだわらず、今を受け入れ、新しい地域社会のあり方を作れば、老若男女が笑顔で豊かである日本が創れる、そう考えています。地域の宝物も、1人1人の人生の宝物は足元にある。

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