はじめに
本イベントは、佐賀県主催の起業・複業支援プログラム「SAGA SMART TERAKOYA」の起業講座として「事業責任者が語る10社の立ち上げプロセスと勝ちパターン」が開催されました。
講師には、ソーシャルM&AファームGOZEN CEO、株式会社Feast 取締役の布田 尚大(ふだ なおひろ)氏が登壇し、「事業責任者が語る10社の立ち上げプロセスと勝ちパターン」をテーマに講座が行われました。
当日は、起業を検討している方から、すでに事業を立ち上げている方まで、幅広い層が参加しました。
今回の記事では当日の様子をお届けします。
事業立ち上げのリアルと基本戦略

冒頭では、参加者の状況確認として「すでに起業している、または事業アイデアがある人はどれくらいいるか」という問いかけがあり、会場の約半数が手を挙げました。起業への関心や具体的な検討段階に入っている参加者が多いことが、会場の反応から伺えます。
帯の仕事を持つ重要性
講師である布田さんが時間をかけて話したのが、「帯の仕事」を持ちながら事業を進めるという考え方でした。いきなり独立するのではなく、毎月一定額が入ってくる仕事を確保した上で、少しずつ事業を育てていくというスタンスです。
「毎月入ってくる定期収入は、心の安定に直結します。これは精神論ではなく、実体験です」と布田さんは語ります。
起業当初、自身も前職からの業務委託や知人経由のスポット業務を受けながら会社を続けていたことが紹介されました。具体的には、月額10万円前後の仕事を複数組み合わせていたことが数字とともに示され、事業を継続するための進め方として語られました。
また、数千万円規模でM&Aを経験した起業家のエピソードとして、「銀行口座の残高が減っていくことが想像以上に精神的な負担になる」という実話も共有されました。
「頭では分かっていても、残高が減るのを見るのは本当にきつい。だからこそ、無理なく続けられる形が大切です」と布田さんは続けます。
事業立ち上げのパターンと具体事例

個人の経験談を踏まえ、話題はこれまで関わってきた事業や起業家の事例へと広がります。事業立ち上げの代表的なパターンが整理され、成功例だけでなく、思うようにいかなかったケースにも触れながら、現場で積み重ねてきた実感として語られました。
さらに事業の立ち上げ方にはいくつかの典型的な型があるとして、SNSをきっかけに一気に広がる「モメンタム型」、サステナブルやSDGs、AIといった時流を捉える「トレンドに乗る型」、人材紹介のように市場ニーズが明確な分野で展開する型など、複数のパターンが紹介されました。また、資金調達や急成長を前提とするスタートアップ型、思想や世界観から事業を組み立てるコンセプトありき型、「自分が欲しい」「自分が困った」という個人的な動機から始まる n=1 型など、切り口の異なる例も挙げられています。
それぞれの型については、事業の楽しさ、収益性、難易度のバランスが大きく異なる点が説明されました。その上で、「どの型が正解という話ではありません」と前置きしつつ、「自分がどの位置で勝負するのかを意識しないまま始めると、後からズレが生じやすい」と指摘もありました。
たとえば、目指す収益規模や関わり方のイメージが曖昧なまま進めることで、途中から負担が大きくなったり、想定していた形で続けられなくなったりする状況を念頭に置いたものです。こうした点を踏まえ、事業フェーズの異なる参加者を念頭に置いた視点が示されました。
トレンド活用の注意点
なかでも、トレンドを起点にした事業については、立ち止まって考える必要性が語られました。
「サステナブルだから売れるわけではありません。まず『欲しい』『使いたい』という気持ちがあって、その上に価値観が乗る必要があります」
これまでに見てきた事業の傾向を踏まえ、理念や社会性を前面に出すだけでは、事業として続かないケースが多いことにも触れています。商品やサービスそのものに魅力がなければ、どれほどメッセージ性が強くても、継続にはつながりにくいという本質的な指摘が続きました。
話題は何度かトレンドの話に戻りながら、そのたびに「それは誰にとって、どんな価値なのか」という問いに立ち返ります。トレンドを入り口にしつつも、最終的には事業としてどう成立させるかが繰り返し問われていました。
ワークショップ:AIを活用した事業アイデア検討
後半は、AIを活用したワークショップが行われました。参加者はエレベーターピッチシートを使い、事業アイデアを手書きで整理したうえで、その内容をAIに入力し、フィードバックを受け取る流れで進みます。
AIからは複数のアイデアや改善案が提示され、参加者はそれらを点数化しながら、「やりたい度」「実現できそうか」といった観点で見直していきました。記入後には、各自のアイデアやAIの指摘内容について意見交換も行われました。
公開メンタリング

終盤には公開メンタリングの時間が設けられ、参加者が自身の事業や構想について、布田氏に直接相談する場が用意されました。
今回取り上げられたテーマは2つです。1つは、環境教育とイラスト制作を組み合わせた活動に関する相談でした。相談者はイラストレーターとして広告系の制作にも関わってきた一方で、従来得意としていた表現(イラストマップなど)が時代の変化で仕事につながりにくくなっている現状を共有し、近年取り組み始めた動画向けのイラストやアニメーション制作を、どう事業として成り立たせていくかが論点として置かれました。
もう1つは、金融リテラシー教育を軸にした起業構想です。相談者は自身の経験を背景に、投資初心者に向けて学びの機会を提供するサービスを検討しており、(AIとの壁打ちでターゲット像が揺れたことにも触れながら)誰に、どの形式で、どう価値を届けるのがよいかを相談しました。あわせて、動画教材と個別セッションを組み合わせた伴走型の支援構想も共有されました。
それぞれの相談に対し、「まずは需要があるところで収益を作る」「価格は思っているより高く設定してよい」「発信を通じて自分の立ち位置を明確にする」といった助言が示されました。早い段階で収益の手応えをつくりつつ、何ができる人なのかを発信で言語化していくことが、事業を継続するための土台になるという考え方が、具体的なやり取りの中で確認されていました。
まとめ
今回の講座では、講師である布田さん自身の経験や、これまで関わってきた事業・起業家の事例をもとに、事業を立ち上げ、続けていくための考え方が語られました。独立のタイミング、帯の仕事の持ち方、事業の型の選び方、トレンドとの距離感など、話題は多岐にわたりましたが、いずれも「続けられるかどうか」という一点を見据えた内容です。
事業を始めることそのものよりも、どう収益をつくり、どう形を変えながら続けていくか。
これは起業・複業を問わず、考え続けなければならない領域です。
3年目となるSAGA Smart Terakoyaでは「やってみたい」を形にするだけでなく、その先も見据えられる講座となりました。
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