はじめに
2025年7月から3回にわたり、横須賀市産業交流プラザで開催された「Yomiivo(Yokosuka Miura Innovation Voyage)」。テーマは「心・技・体」です。3日間を通じて、参加者は知識を学ぶだけでなく、仲間と共に考え、語り合い、挑戦するなかで、「事業を実際に動かす力」を体感しました。
今回は全3回にわたる講座の様子をお伝えします。
DAY1「心」:諦めない気持ちを育てる
初日のテーマは「心」。この日は、起業に挑む上で最も大切な姿勢について学びました。
講師を務める弊社代表の田中は、冒頭で「事業に必要なのは諦めないこと」と語りました。勢いや信頼といった要素ももちろん重要ですが、最終的に事業を続けられるかどうか「諦めない姿勢」にかかっていると言います。
その上で「楽しく取り組むこと」と「孤独にならないこと」が諦めにくくする二つの要素であると紹介しました。
ワーク①:理想の人生を言語化し、価値観を見つける
前半のワークでは「理想の人生を言語化する」ことに挑戦しました。
参加者は付箋に「私は〇〇である」「私は〇〇をしている」「私は〇〇を手に入れている」と書き出し、未来の自分を具体的な言葉にしていきます。最低10個、多い人は20個以上の付箋を並べるうちに、漠然としていた思いが少しずつ形を帯びていきます。
続いてペアワークに進み、互いの付箋を見比べながら「どちらを大切にしたいか」を質問しあいます。相手に提示された二つの選択肢のうち一つを選び、勝ち残った付箋を次の比較へ進めていく-トーナメント方式-です。
最終的に「自分が幸せになる条件ベスト5」が浮かび上がり、参加者は思いがけない価値観や夢を再発見します。普段は家族や友人にも語らないような本音を共有する時間となり、互いに信頼関係を築くきっかけにもなりました。
ワーク②:理想、強みから事業アイデアへ
後半は、前半で見つけた「理想」や「強み」を組み合わせて、実際の事業アイデアへと発展させていく作業に取り組みます。フローティングシートに付箋を貼り合わせ、商品内容やターゲット、収益の仕組みまで具体的に書き出していくプロセスは、漠然とした思いを「事業計画」という形に落とし込む体験となり、参加者に新鮮な学びをもたらします。
最後には、それぞれが選んだ一つの事業プランをシートにまとめ、次回へつなげる宿題として「類似事例の調査」が課されました。
「今日作ったプランはすべて自分の好きという気持ちや強みから生まれたもの。だからこそ諦めにくく、楽しみながら続けられるはず」と締めくくられました。
DAY2「技」:数字と計画で事業を磨く
2日目のテーマは「技」。この日は、資金調達や事業計画といった、起業に欠かせない実務スキルに焦点が当てられました。
田中は「お金は薬と同じ。用法・用量を誤ると危険になる」と訴えます。資金の扱い方を誤れば事業を危うくする一方、正しく使えば成長を後押しする力になると説明しました。
資金調達の仕組みと活用法
座学では、借入(デッドファイナンス)や出資(エクイティ)、クラウドファンディングといった資金調達の仕組みが具体的に紹介されました。特に、日本政策金融公庫や信用金庫など、創業期の事業者に寄り添う金融機関の活用については、参加者にとって大きな学びとなりました。
また、補助金や助成金の基本的な仕組みや、地元の商工会議所で受けられる支援の実例も紹介されました。たとえば、申請書類作成のサポートや金融機関との橋渡し、さらにはクラウドファンディングに対する補助制度などです。こうした実際の相談先が示されたことで、参加者が行動に移す道筋が明確になりました。
さらに、クラウドファンディングを「資金を得る手段」であると同時に「応援者や共感者を集める仕組み」として捉える視点が提示されました。大阪での化粧品事業が目標額の230%を達成した事例や、浅草での食品づくりへの挑戦、そして田中自身が事業メンバー参加権をリターンに設定し40万円以上を集めた実践例などが紹介され、リターン設計や支援者との関係づくりの重要性が具体的に語られました。
事業計画づくりの実践
後半では、事業計画づくりの実践に取り組みました。大谷翔平選手が高校時代に活用していたことでも知られる「マンダラチャート」を用い、1年後の目標と、それを達成するために必要な行動を具体的に書き出すワークが行われました。参加者は自らのビジネスを数字や計画に落とし込み、事業の進め方を整理していきました。
事業計画は一つの理想形に固定するのではなく、「ベスト」「ベター」「バッド」の3つのシナリオを描くことが重要です。最良のケースだけでなく、現実的な想定や最悪の事態も含めて準備しておくことで、変化に柔軟に対応できると伝えられました。
DAY3「体」:仲間と挑戦を形にする
最終日のテーマは「体」。ここでの「体」とは、鍛える身体ではなく、これまで練り上げてきたアイデアを実際に「体現」し、事業として語り切る力を意味しています。3日間の集大成として、参加者が仲間の前で自らのプランを発表しました。
田中は「アイデアだけでは意味がない。思いつく人は1万人、やってみる人は100人、続ける人は1人」と述べ、継続することの重要性を力説しました。さらに「諦めずに続ければ1万人に1人になれる。だから諦めないこと」と呼びかけ、参加者に発表へ臨む心構えを促しました。
事業プラン発表会
発表の持ち時間は一人5分、これに講師やオブザーバーからのフィードバック2分が加わり、1人あたり計7分で進行しました。教育事業、地域活性、子育て支援、観光や食品関連など、発表されたプランは幅広く、参加者の経験や地域への思いが色濃く反映されていました。例えば、大学生の力を活かして観光や農業と結びつける取り組み、地元食材を使ったスイーツの開発、高齢者の暮らしを支えるサービス、地域新聞のDX化といった具体的な事業案も見られました。
また、聴講者には「共感シート」が用意され、QRコードを通じてスマートフォンなどから記入できる仕組みが導入されました。記入項目は「共感した点」「協力できること」「感想」「応援メッセージ」の4つで、「批判はせずアドバイスを」「協力できることがあればぜひ書いてほしい」といったルールが示されました。
全員の発表が終わった後、「小さくても、1ミリでも、一歩でも前に進むこと。大切なのは続けること。そして困ったときは仲間に相談すればいい。あなたは一人ではない」と締めくくられました。
仲間とともに踏み出した新しい一歩
3日間を通じて参加者は「心・技・体」のプロセスを体験し、夢を具体的な事業プランへと発展させました。
最終日には発表会が行われ、事務局からは今後のスタートアップオーディションや資金調達セミナーの案内もあり、継続的な支援体制が整っていることが示されました。
ここで生まれたアイデアが、横須賀・三浦地域の新たな活力となることが楽しみですね。