新しい働き方の“種”は、地元の足元にあった
「複業や起業に関心はあるけれど、なかなかそのきっかけがない」。
「自分のまわりには、こんな話を気軽にできる人がいない」。
地域で生活をしながらも、そんなもやもやを抱えている人は多いのではないでしょうか。
佐賀市を中心に、複業や起業に関する様々な講座を展開してきたSAGA Smart Terakoyaの運営チームも、ここ数年ずっと悩んでいました。「本当に伝えたい人たちに届けきれていない」「佐賀市に限定した開催では、せっかくの講座が十分に広がっていないのではないか」という思いです。
2025年度、SAGA Smart Terakoyaは初めて大きな一歩を踏み出しました。これまでは佐賀市で開催していた講座を、「鳥栖市」「鹿島市」「伊万里市」「唐津市」の4地域へ持ち込み、各地で同じ内容の体験型ワークショップを開催するという挑戦です。
この新しいチャレンジを決めた理由は明確でした。
それは、「まだ見ぬ地域の人々との出会い」と「それぞれの足元に眠っている熱意や才能に直接触れること」です。
今回の講座では、それぞれの地域で活躍する地元コーディネーターを招き、各地域の独自のネットワークを最大限に活用しました。地元ならではの信頼関係を活かし、単なる一過性のイベントではなく、地域で“続くつながり”を育てるための丁寧な種まきを実施しました。
今回はそんなTerakoya体験会の様子をご紹介します。
“ここにもいた!”――満席続きの会場で見えた「新しい層」
当初、運営チームが想定していたのは各会場20名程度の小規模な集まりでした。しかし、いざ蓋を開けてみると、驚くほどの盛況ぶりでした。各地とも申し込みが殺到し、どの会場も満席、増席対応が続きました。
特に運営側が嬉しい驚きとして感じたのは、参加者の半数以上が地元のコーディネーターの知人や既存のネットワークではない「初参加の人たち」だったことです。「地元でこんなテーマに関心を持つ人がこんなにいるとは思わなかった」という声が、運営チームだけでなく参加者からも挙がりました。
鹿島市のゲストハウスを会場にした際には、地元の雰囲気に溶け込むように、床に座って輪になって話し合うというリラックスしたスタイルがとられました。講座後には地元特産の食材を活かした特製おつまみを囲み、参加者同士がそのまま懇親会を楽しみ、夜更けまで語り合いました。中にはそのままゲストハウスに宿泊する人もおり、「こんな交流会は初めて」「ここで出会った人たちとは、この先もずっと繋がりたい」という声が多数寄せられました。
他の地域でも同様に、「家から自転車で来れる距離で初めて参加できた」「佐賀市で開催されているのは知っていたが、遠いと思って参加できなかったので、地元開催は本当にありがたい」といった声が続出しました。各地域で、新たな人の繋がりが生まれていく瞬間を実感することができました。
多様な参加者が生んだ、さまざまな「一歩」
参加者は会社員やフリーランス、主婦、大学生、定年退職後のシニア層など年齢や職業も幅広く、想像以上に多様でした。地域で暮らしながら、それぞれが抱えている想いもまた多様でした。
「いま勤めている会社を続けながら、自分自身の経験や特技を生かした新しい仕事を持ちたい」
「子育て中だけど、地域に還元できるような小さな起業にチャレンジしたい」
「自分のやりたいことがあっても、なかなか周囲に話せる人がいなかった」
年齢も境遇も様々な人々が、それぞれの言葉で抱いている夢や目標を話し合うことで、会場はどんどん熱を帯びていきました。
講座の具体的な流れ――“自分だけの価値”に出会うために
講座はまず、お互いの自己紹介やアイスブレイクのカードワークからスタートし、徐々に緊張をほぐすことから始まりました。
その後は「新しい働き方」をテーマに、終身雇用の時代から自律的なキャリア形成への転換、人口減少や少子高齢化に伴う働き方の多様化、予測が難しく変化が激しい時代に求められる力について深掘りしていきました。
ワークショップでは、「自分が理想とする人生や働き方」を個人ごとに書き出し、グループで共有。自分の強みや価値観を見つけるワークも実施され、参加者がそれぞれの想いを言語化することで、多くの気づきや共感が生まれました。
また、「スキルや経験はすでに持っている。大切なのは希少性」というメッセージが投げかけられ、自分が持つ経験やスキルをどう掛け合わせてオリジナルな価値を生み出すかを考えるヒントが共有されました。
一過性で終わらない「続くつながり」の芽生え
最後の交流会では、参加者同士が地元同士で繋がり、新たなネットワークを広げました。
Slackを活用したオンラインコミュニティの案内もあり、その場でコミュニティに参加し情報交換を始める人も。
地元の会場で出会った参加者同士が、その後も情報交換を続け、地域イベントの企画や勉強会の開催で協力し合うなど、「一度限り」では終わらないつながりが次々と芽生えています。「地元で一度体験したことで、本講座にも興味を持った」「同じ地域でこんな仲間が見つかるとは思わなかった」という声が多く聞かれ、今回の出張講座が地域で新しい働き方への“入口”となり、未来へとつながる確かな手ごたえを感じました。
“宝は足元にある”――佐賀から広がる未来に向けて
今回の出張講座を通じて一番強く感じたのは、「どの町にも、複業や起業を志す人がこんなにもいる」ということです。
地元の足元に視点を移せば、まだまだ新しい働き方の可能性や出会い、地域の人材という「宝」が眠っています。
SAGA Smart Terakoyaは今後も地域に密着しながら、より多くの人たちに新しい挑戦のきっかけを届ける場として進化していきます。地域と人をつなぎ、一歩ずつ“種まき”を続けていくことで、「やってみたい」を実現できる佐賀の未来を目指します。
「ここにもいた!」――あなたの足元にも、まだ知らない“宝”が眠っているかもしれません。