【イベントレポート】ここから、しまね Vol.2 〜県外出身者から見る島根県〜

はじめに

2024年2月20日、「ここから島根」イベントが開催されました。本イベントは、島根県に関心を持つ人々が集い、地域の魅力を深く知ることを目的に企画されました。会場(CAFE & HALL ours:東京都品川区)には多くの参加者が集まり、和やかな雰囲気の中でスタートしました。

司会進行を務めたのは、株式会社トレジャーフットの鈴木雄人です。神奈川県出身の彼は、島根を学びながら進行を行うというフレッシュな視点で、会場の雰囲気を和ませつつ進行しました。

 

ゲストトーク:「島根での学生生活とまちづくり」

小玉 秦士さん(NTT東日本・農業DX担当)

「島根ってどんなところ?」

小玉さんは滋賀県出身。現在はNTT東日本で農業DXの仕事に携わっていますが、大学時代は島根大学に在籍し、「土壌生態学」を専攻していました。農業の基盤である「土」を研究するために、あえて島根という土地を選んだと言います。「土を掘って、土の違いを分析する。そんなフィールドワークが当たり前の日々でした」
大学時代を振り返る小玉さんは、どこか懐かしそうな表情を浮かべていました。

島根大学での学生生活

「島根に来て驚いたこと」

大学入学と同時に島根に移り住んだ小玉さんは、まず「島根大学の学生の多様さ」に驚いたそうです。「地域の大学だから地元出身の人が多いのかと思いきや、意外と県外出身者が多かったんです。僕の周りも関東・関西から来ている人ばかりでした」

特に帰省シーズンになると、みんなバラバラに地元へ帰っていくという光景が印象的でした。「みんな関西の方が多くて、高速バスで何時間もかけて帰るんです。僕も滋賀に帰るのに6時間かかりました」
こうした「遠くに来た」という実感が、島根での生活を特別なものにしていきます。

「島根のまちと学生の関わり」

大学生活の中で、小玉さんは「まちづくり」にも積極的に関わりました。「島根大学には"スナフキン"という弾き語りサークルがあって、僕もその一員でした。出雲の『木綿街道』という歴史的な街並みで、音楽イベントをやる機会をもらったんです」

小玉さんたちは、古い町屋が並ぶ木綿街道で、路上ライブを開催しました。「最初は手探りでしたが、地元の人たちが応援してくれて、『また来て演奏してよ!』と言ってもらえたのがすごく嬉しかったです」
そんな経験を重ねるうちに、地域のイベントにも呼ばれるようになり、やがて松江FC(地元サッカーチーム)の試合イベントでも音楽を披露することになります。「サッカーの試合が終わると、目の前に子供たちが集まってきて、楽しそうに聞いてくれるんです。『音楽で地域に貢献できるんだな』と実感しました」

フィールドワークと島根の自然

「土を掘り続けた4年間」

小玉さんの専門は土壌生態学。研究では、ひたすら土を掘り、分類し、その土地の特性を分析していました。「島根は地形が面白くて、場所によって土の質が全然違うんです。海沿いの土と山の土では、見た目も手触りもまるで違います」
また、土の特性を活かして、水を浄化する研究にも取り組んでいたそうです。「土の中の層をうまく使うことで、水をきれいにする技術があるんです。島根の土壌は、こうした研究にも適していました」

「沖ノ島での実習と衝撃の出会い」

大学のフィールドワークでは、島根の離島「沖ノ島」にも行ったことがあるそうです。「沖ノ島まではフェリーで約2時間です。でも、私は船酔いしやすく、着いた時にはぐったりしていました」と笑いながら話しました。

現地では、海洋生態の研究が行われていました。「沖ノ島の海には、本土では見られない魚がたくさんいるんです。ある日、カラフルな魚を見つけて『おっ、これ触ってみよう!』と思ったら、先生にめっちゃ止められました」なんと、その魚は猛毒を持つ「オニオコゼ」で、触ると激しい痛みを伴う毒針を持っているそうです。「先生が止めてくれなかったら、大変なことになってましたね。あれは本当にびっくりしました」

島根のおすすめスポット&食文化

「島根で好きな場所」

参加者から「島根で一番好きな場所は?」と聞かれると、小玉さんは「松江駅」と答えました。「意外ですよね。でも、僕にとって松江駅はすごく思い出深い場所なんです。」その理由は、「帰省前の松江駅に漂うエモーショナルな雰囲気」だと言います。「実家に帰る前に駅で過ごす時間って、なんとも言えない気持ちになるんです。帰れる嬉しさと島根を離れる寂しさが入り混じっていて」

また、松江駅前ではサークル仲間とギターを弾いていたこともあるそうです。「冬の寒い日でも、ギターケースを開けて、みんなで歌ってました。そんな時間が、すごく楽しかったですね」

「おすすめの島根グルメ」

島根の食べ物についても熱く語ってくれました。
「赤てんは最高です! もう何回食べたか分かりません」「赤てん」は、島根県浜田市の名物で、練り物に赤い色をつけ、ピリ辛味に仕上げた独特な蒲鉾です。 ​パン粉をつけて揚げてあるため、サクサクとした食感が特徴です。
 「それと、出雲そば。僕は松江の『鴨南蛮』っていう蕎麦が大好きでした」

島根には、美味しいものがたくさんあることがよく伝わってきました。

島根を知ることの楽しさ

最後に、小玉さんは、島根での経験を振り返りながら、こんなメッセージを残しました。「僕は滋賀出身で、最初は島根のことを何も知りませんでした。でも、ここでの出会いや経験が、僕にとって大切なものになったんです」
最初は慣れない土地に戸惑いもありましたが、島根の自然や人々の温かさに触れるうちに、その魅力を深く実感するようになったそうです「島根には、他の場所にはない特別な空気があります。静かで落ち着いた環境の中で、地域の文化や歴史が息づいています」

そして、島根を訪れたことがない人へ、こんな言葉を贈りました。
「もし島根に行ったことがない人がいたら、ぜひ一度訪れてみてください。人も、景色も、食べ物も、本当に素晴らしいです」

「島根の美酒と名産品」— 郷土の味に触れる交流会

イベントの後半では、島根の美味しい日本酒と軽食を楽しむ交流会が開かれました。参加者はそれぞれの席で乾杯しながら、お互いに島根の魅力について話を深める時間となりました。

提供された日本酒は3種類。「李白(りはく)」は香り穏やかでコクのある吟醸酒、「七冠馬(ななかんば)」は爽やかなマスカット系の香りを持つ純米大吟醸、そして「死神(しにがみ)」はインパクトのある名前とラベルが特徴的な希少なお酒です。それぞれの日本酒を味わいながら、参加者同士で感想を交換し合う姿が見られました。また、軽食には島根ならではの名産品が並びました。赤てんや鶏卵饅頭など、普段なかなか味わえない島根の郷土料理に舌鼓を打ちながら、自然と会話が弾んでいました。

参加者からは「イベントを通じて、島根について知る機会が増えたという声や、実際に訪れてみたい]」という感想も聞かれました。また、島根にゆかりのある人々が集まり、情報交換を行うことで新たな繋がりが生まれたことも、大きな収穫だったようです。

島根の美酒と名産に触れながら、心あたたまる交流が広がった今回のイベント。地域の魅力を再発見するとともに、世代や立場を超えたつながりが生まれる貴重なひとときとなりました。島根への関心が高まり、新たな訪問や交流のきっかけにもつながることでしょう。今後もこのような出会いが、地域と人とを結ぶ架け橋となることを願ってやみません。

 

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