2025年2月、新潟県妙高市で「地域の魅力を体感し、地域創生の未来を切り拓くフィールドワーク」が開催されました。今回のフィールドワークは、これまで妙高市が取り組んできた移住促進や関係人口の創出をさらに一歩進め、「起業・創業」の視点をかけ合にわせることで、地域創生への具体的なアクションを生むことを狙いとしています。
参加者には10代から50代まで多彩なバックグラウンドを持ち、初めて妙高市を訪れる方もいれば、以前から妙高市と関わりを持ち続けてきた方もいました。そんな参加者たちが2日間、冬の妙高で見て、食べて、語り合い、地元の起業家との対話を通じて生まれた「学び」と「一歩踏み出す勇気」をお伝えします。
◆「地域創生の未来を切り拓く」フィールドワークとは
今回のフィールドワークは、妙高市が展開している「起業創業プログラム」と「関係人口創出プログラム」が融合した新たな試みです。
2024年11月に開催された第1回フィールドワークは移住や地域を知るためのプログラムが中心でした。今回のフィールドワークは、そこからさらに「起業・創業」の要素が取り入れられた、参加者が「自分らしい形で地域に関わる方法」を見つけるきっかけを提供する内容となりました。
特に「地域と何かやりたい気持ちはあるけれど、最初の一歩が踏み出せない」という想いを抱えているような方が最初の一歩を踏み出せるように、実際に妙高市で事業を立ち上げた起業家の方々との対話を通じて、地域創生につながるアイデアを具体化するワークを実施しています。荘厳な雪景色を眺めながら、自分の将来の可能性や地域との関わり方をじっくりと探る2日間となりました。
◆妙高のポテンシャルを見つめ直す1日目
◇オリエンテーション in Myoko Coffee 高原駅前店
まずは妙高高原駅近くの「Myoko Coffee 高原駅前店」でオリエンテーションです。
Myoko Coffeeでは創業ストーリーを伺いながら、地域で事業を立ち上げる面白さや難しさを学びました。妙高市で実際に起業した方との「生の対話」は非常に刺激的なものとなりました。
◇ランチは「台所micchi」で続いて訪れたのは、昨年末にオープンしたばかりの「台所micchi」。切り盛りするのは、妙高高原町出身の竹田ゆきなさんです。
大学生の頃に一度地元を離れ、飲食店などで修業を重ねながら「30歳までに自分の店を持ちたい」という夢を叶えようと開業しました。おいしい食事に舌鼓を打ち、起業の背景など様々な背景を伺うことで、上質なインプットとアウトプットのできる時間でした。
◇かやぶき屋根の旅館「はるみ荘」とMYOKO BASE CAMPの視察
午後は妙高のワーケーション拠点である「MYOKO BASE CAMP」や、かやぶき屋根の旅館である「はるみ荘」を見学しました。MYOKO BASE CAMPはZoom社との連携により、快適なワークスペースを提供し、心と体の健康から働く人の活力向上、生産性の向上が望める環境を提供する施設として人気があります。また、はるみ荘では株式会社Wow Myoko代表取締役の岡田麻梨亜(おかだ まりあ)さんからお話を伺いました。
岡田さんは、妙高市杉野沢で育ち、インドやフィリピンへの留学を通じてグローバルな視点を身につけました。2017年には、ロッテアライリゾートでインバウンド観光のマーケティングを担当し、地域の魅力を世界に発信する役割を担いました。その後、育児休暇中に「株式会社Wow Myoko」を設立し、実家である茅葺き屋根の旅館「山海華旅館 はるみ荘」の継承にも取り組んでいます。 (岡田さんの取り組みや妙高への想いについて知りたい方はこちら:https://treasurefoot.com/event_info/4599/)
今回は、はるみ荘を見学するだけでなく、岡田さんの地元への愛や、起業に至ったエピソードを伺いました。
◇夜は地元の人気店「やまぎし」で交流会
1日目の締めくくりは居酒屋「やまぎし」で交流会。未成年のメンバーはソフトドリンクでの参加でしたが、20代から50代まで多彩な面々が一堂に会し、妙高の課題や将来について和やかに話し合いました。中には「こんな事業を始めようと思っている」という相談から、周囲が「それなら地域のNPOと組んだ方がいいかも」など積極的にアイデアを出し合う場面も。
地酒や郷土料理を通じて、心の距離が縮まったからこそ生まれるディスカッションでは年齢や属性を問わず、自分の想いを伝え合うことができました。
◆さらに深まる学びと出会いの2日目
◇「六・十朝市」で始まる朝
2日目は妙高市名物の「六・十朝市」の見学からスタートです。6のつく日と0のつく日に開催されるこの朝市では、新鮮な野菜やコーヒー、大判焼きなどが並び、雪深い妙高市で暖かさを感じられました。
◇高校生による場づくりの例、みんなの寄り道BASEの見学
朝市見学の後は、新井駅にある「みんなの寄り道BASE」へ移動。
ここは当初、新井高校で開催された、妙高市議会の出前講座の意見交換の中で、生徒達から「駅周辺に自習スペースが欲しい!」という意見があり、2023年に「Studyオアシス」という名前でオープンしました。しかし、当初の想定よりも利用が伸び悩んでいたことから「立ち寄りやすい雰囲気を作ろう」とリニューアルされたものです。
自分たちの「やりたい!」「やってみたい!」という想いは小さなものかもしれません。それがやがて大きな動きにつながるという事例は、まさに「行動を起こすことの大切さ」を体現しているようでした。
◇MAHORAでの出会い最後に訪れたのは、古民家をリノベーションした参加型古民家宿兼交流スペース「MAHORA」。台湾から妙高市へ移住した蔡紋如(サイウェンル)さんが運営しています。築年数を感じさせる趣ある空間と、新しいアイデアが融合する不思議な場所で、古き良き文化と先進的な取り組みの共存を目の当たりにすることができました。
◆妙高から広がるチャンネルとチャンス
今回のフィールドワークでは、妙高市というフィールドを舞台に様々な分野で活躍する起業家の皆さんへお話を伺いました。
参加された方からは以下のような感想をいただきました。
「イベント参加前には、なにか考え方を深めればいいと思っていたけれど、実際に参加してみたら想像以上の学びがありました!今回、妙高市の事業者さんを中心に回りましたが、まだまだ妙高には自分の知らない魅力や課題があるのだと感じました」
「起業家の方々によるお話はどれも興味深かったです。主体的に取り組んでいる、若い力の可能性や重要性を再認識しました」
「これまでも地域で活動する人とは関わってきましたが、今回妙高市で活動する方々のお話を聞き、実際に活動する上で大切なことやきっかけ、経緯など、新しい発見がありました」
このフィールドワークや3月開催のアウトプットイベント(レポートをお楽しみに!)で感じたこと、アイデア、やりたいことが実をつけ、妙高市を元気にする一助になることを祈っています。
冬の雪景色が春の新芽へと移り変わるように、地域創生の可能性も大きく芽吹くタイミングは、今まさに訪れています。