2025年2月13日、厳木(きゅうらぎ:佐賀県唐津市)さいこうプロジェクトの事前ミーティングがオンラインで開催されました。地元関係者や学生、地域活性化に関心のある人々が集まり、道の駅「風のふるさと館」を中心とした厳木町の未来について意見を交わしました。
「厳木さいこうプロジェクト」の趣旨
Challenge Terakoya 現地コーディネーターの横道亨氏(よこみち・とおる)によれば「厳木さいこうプロジェクト」は、「道の駅 風のふるさと館」を拠点に、地域全体の活性化を目的とする取り組みです。
「道の駅 風のふるさと館」は、単なる物販の場ではなく、地域の観光や交流の拠点として重要な役割を果たしています。
しかし現在、名産品のPR不足や野菜の供給が不安定で、道の駅で十分な販売ができない状況が続いています。さらに、町を通らずに移動できるバイパス道路が無料化されることで、来場者の減少が問題視されています。まずは道の駅の活性化を進め、訪れる人々にとって魅力的な場にすることが求められます。さらに、地域全体が連携し、新たなアイデアを生み出すことで、厳木町の未来の可能性を広げていこうと考えています。
横道氏は、プロジェクトの具体的な目標として、「道の駅 風のふるさと館」を目的地にすることを目指しています。
これまで「通り道」に過ぎなかったこの町を「行ってみたい」「また来たい」と思われる場所へと変えていこうとしているのです。「このプロジェクトの成功には、多様な視点が必要です。今日のミーティングを通して、皆さんの意見やアイデアをぜひ聞かせてください」横道氏はそう呼びかけ、活発な議論を促しました。
道の駅「風のふるさと館」の現状
道の駅「風のふるさと館」は、佐賀県唐津市厳木町に位置し、地域の特産品販売や観光拠点としての役割を担っています。
県内には10か所の道の駅があり、「風のふるさと館」は2番目に開設された、長い歴史を持つ施設です。
現在の年間売上は約2億円、年間来場者数は17万人、客単価は1,100円、特に夏場はソフトクリームの売上が好調です。
直面している課題
1. 名産品のPR不足
地元の特産品として猪鍋、柚子、みかん、ブランド鶏などがあります。しかし、それらの魅力が十分に発信されておらず「厳木といえばこれ!」と認識される名物が確立されていないのが現状です。
また、商品の陳列や情報発信の工夫が足りず、来場者が商品の魅力に気づきにくいことも課題となっています。さらに、観光客へのアピールが弱く、来店者をリピーターにする仕掛けが十分でないことも課題となっています。
2. 生産者の高齢化と野菜供給の課題
地元農家の高齢化が進む一方で、新規就農者が少なく、道の駅への野菜供給が追いつかない状況になっています。さらに、人口減少などが一因で厳木町内のスーパーが閉店したことで、地元住民が道の駅で日常的に野菜を購入するようになり、観光客向けの野菜が十分に確保できないという問題も生じています。
午前中に地元住民が買い物を済ませると、午後には旬の野菜コーナーが品薄になってしまっています。
3. バイパス道路の無料化による影響
来年7月に町を通らずに移動できるバイパス道路が無料化されることで、これまで有料のバイパス道路を避けて厳木で降りていた車が、そのまま通過してしまう可能性があります。
現在は、有料道路を避けて厳木で降りるドライバーが道の駅に立ち寄ることも少なくありませんが、バイパス道路の無料化により、立ち寄る動機が失われることが懸念されています。
参加者同士でアイデアを出し合い、新しい可能性を探る
事前ミーティングの後半では、参加者同士のディスカッションが行われ、道の駅「風のふるさと館」の活性化に向けた具体的なアイデアが多数出されました。
目標の明確化
「厳木を目的地にする」というビジョンはあるものの「来場者数をどの程度増やすのか?」「売上をどれだけ伸ばすのか?」といった具体的な目標設定が必要ではないかという意見が出されました。
これを受け、横道氏は「5年後の2030年までに、年間来場者数を17万人から20万人へ、年間売上を2億円から3億円へ増加させる」という数値目標を示しました。これにより、目標が明確になり、具体的な施策についての議論が深まりました。
名物商品の開発とブランディングの強化
「厳木といえば〇〇」と言える特色を確立し、効果的にPRすることが重要ではないかという意見が出されました。
柚子・鶏・猪肉を活用した特産品の開発や、「日本一大きなソフトクリーム」のブランド強化による道の駅のシンボル化が提案されました。また、猪鍋や柚子ソースを使った料理など、ここでしか味わえないご当地グルメの提供も有効ではないかという声が上がりました。
情報発信の強化
SNSを活用した有効なプロモーションも必要という意見があり、Instagram・YouTube・TikTokなどのショート動画を活用し、特産品やイベントをPRする提案が出されました。「名物商品の大食いチャレンジや料理対決、人気商品ランキングなど、エンタメ性を取り入れた対決形式のショート動画は、若者の関心を集めやすいのではないか」という意見もありました。
また、滞在時間を延ばし、再訪を促すために、観光ガイドブックを作成し、周辺の観光・体験スポットをまとめたマップを配布することも提案されています。
生産者支援と農業の担い手確保
「野菜の供給不足」を解決するためには、生産者支援の強化が必要です。福岡から車で約1時間というアクセスの良さを活かし、都市住民向けの週末農業体験を実施し、「都会の人が作った野菜」としてブランド化する案もありました。
また、農家同士の交流を促し、道の駅への出荷メリットを高めるため、生産者支援の必要性や出荷者のメリットを高める施策を実施することが有効だという意見もあります。
データ活用による課題解決
店内の売上を向上させるには、売れ筋商品や来店時間帯を把握し、品揃えや販促戦略を最適化することが不可欠です。そこで、店内にQRコードを掲示し、アンケートを通じてデータを収集する方法が提案されました。数を確保するために、名物のソフトクリーム割引クーポンを提供する施策も検討されています。
飲食スペースの活用と来場者増加策
道の駅は食事の場としての魅力が重要という意見が多く出され、飲食スペースの充実が求められました。現在のうどん専門テナントに加え、直営の飲食スペースを設け、猪鍋定食や柚子を使った創作料理、地元ブランド鶏の炭火焼きなど、特産品を活かしたメニューの提供が集客につながるのではないかという意見も出されました。
加えて、家族連れの来場を増やし、リピーターを確保するために、地元の小中学校と連携し、子ども向けワークショップを開催するアイデアも上がりました。
こうした意見を受け、横道氏は「今日の意見を踏まえ、具体的なアクションを起こしていきたいと考えています。皆さんのアイデアが、厳木の未来をつくっていきます」と述べ、事前ミーティングは締めくくられました。