はじめに
2024年12月21日、SHIBUYA QWSにて「MYOKO MEET UP #03」が開催されました。本イベントは、妙高市(新潟県)が持つ豊かな自然や地域資源を活用し、起業や複業の可能性を探ることを目的に開催されたものです。司会進行を務めたのは、株式会社はじまり日和 代表取締役であり、コミュニティビルダーとしても活躍する柴田大輔(しばた・だいすけ)氏です。
妙高市が抱える課題と可能性
現在の人口は約29,000人で、減少傾向が続いています。その主な要因は、若者の都市部への流出と高齢化です。特に、就職や進学を機に市外へ移住する若者が多く、地域の労働力不足や人口減少といった深刻な問題を引き起こしています。しかし、スキー場や温泉、森林など、全国的にも注目される豊富な観光資源があり、特に冬季観光は地域の大きな強みとなっています。また、里山文化や地元の特産品など、他地域にはない独自の魅力も多く残されています。これらの豊かな資源を活かし、地域活性化や都市部との交流をさらに促進する可能性が期待されています。
ゲストトーク: 生井 一広(なまい・かずひろ)氏
今回のゲストスピーカー、生井氏は、2006年頃から妙高への移住を考え始め、現在も里山の自然と深く関わる暮らしを続けています。このセッションでは、「里山での暮らし」「自然との共生」、そして「新しい里山の未来」というテーマに沿って、自身の体験とビジョンを語りました。
里山での暮らし
妙高での生活は、年月を重ねた古民家を再生することから始まりました。雪国特有の過酷な環境に戸惑うことも多かったものの、修繕を進める中で田んぼや畑の管理を始め、家や自然に対する愛着が次第に深まったそうです。「作物を育てることは自然との対話そのものであり、収穫したものを食べることでその恩恵を実感できます」と語るその言葉は、里山暮らしの本質を象徴しています。
自然との共生
「人間が自然の一部として暮らすことで、持続的な幸福感が得られる」と彼は語ります。里山暮らしは、自然のリズムに寄り添いながら運動・食事・睡眠の質を高め、心身の健康を支えます。田んぼ作業や山の手入れを通じて体を動かし、無農薬の作物を味わうことで、体にも自然の恩恵を取り込むことができます。「自然と調和した生活は、全てがつながっている感覚を取り戻させてくれる」と述べた言葉には、現代社会で失われがちな幸福感を呼び覚ます力があります。
新しい里山の未来
「里山をディズニーランドのような場所にしたい」というビジョンも語られました。これは単なる観光地化ではなく、自然や文化を守りつつ、収穫体験や地域行事を通じて、多くの人々が里山の魅力に触れられる場を作りたいという考えです。このビジョンの背景には、「里山にはその魅力を知ってもらう機会が不足している」という課題があり、里山の価値を再発見し、未来を切り拓こうとする強い思いが込められています。
イベント後半では、「首都圏の人が自然や里山に興味を持ち、関わることができるコンテンツとは?」をテーマにしたワークショップが行われました。参加者は複数のグループに分かれ、妙高市の魅力や課題について議論を行い、成果を全体で共有しました。
里山観光ツアーと会員制プログラム
里山の魅力を体験しながら、短期的な観光から長期的な関係構築までを目指す仕組みが提案されました。田んぼ作業や収穫体験を通じて自然や地元文化に触れることができる観光ツアーが中心となっており、観光客が里山の暮らしを身近に感じるきっかけを提供します。
また、季節ごとの農作業や自然体験を年間を通じて楽しむ会員制プログラムも提案されました。この仕組みは、単発の観光を超えて、都市部と里山の人々との長期的な繋がりを構築することを目的としています。四季折々の里山の魅力を体感し、自然との深い関係性を育むことで、里山への理解と興味を深める内容となっています。
空き家と自給自足の活用
里山の空き家や自然を活用し、暮らしの豊かさを体験できる実践的なプランが提案されました。共同修繕プロジェクトでは、空き家を活用し、参加者が交代で修理作業を行う仕組みが提案されました。それぞれが順番に床や壁などを修繕し、最終的に完成した家は交流の場としても活用されます。このプロジェクトでは、単に作業するだけでなく、修繕を通じて里山生活の魅力を体験し、仲間と達成感を共有することを目的としています。また、短期間で自給自足を体験できる1日完結プログラムも提案されました。このプランでは、種まき、収穫、調理といった一連の作業を1日に凝縮。参加者がすべての行程を自分の手で行うことで、里山暮らしの充実感を味わえる内容です。
さらに、自然とのふれあいを重視したキャンププランでは、キャンプや炭作り、地元住民との交流が組み込まれています。このプランは、里山での生活の楽しさを体験できるだけでなく、地元の文化や人々とのつながりを深める場を作ります。
観光客向けSNS特化型ツアー
SNSパッケージツアーでは、観光客が訪れたくなるような 写真映えするスポットや体験を巡るツアーが提案されました。このプランには、東京から妙高までの移動手段や現地の宿泊施設を含め、観光客が手軽に利用できるパッケージ内容が盛り込まれています。里山の自然や文化をSNSで発信することを目的とし、若い世代を中心に関心を引くものです。
次に、冬限定の雪中体験では、妙高市の冬の魅力を最大限に活かしたプログラムが考案されました。雪中キャンプやサウナ、雪合戦など、都会では体験できない非日常的なアクティビティを提供する予定です。さらに、農業遺産の登録を目指す取り組みも目を引きました。妙高市の農業文化を農業遺産として国際的に認知されるよう働きかけることで、地元の農業の価値を高め、国内外からの観光客を増やす狙いがあります。この登録を通じて、妙高市の魅力を広く発信し、地域の活性化を図ります。
人との繋がりを重視した交流型イベント
観光客が地元住民と直接触れ合い、里山の魅力を深く体感できる交流型イベントの案もありました。地元住民との交流イベントでは、飲み会や食事会といったカジュアルな場を通じて、観光客と地元住民がつながる機会を提供します。このプランでは、地域の文化や暮らしを地元住民のエピソードを交えながら学び、観光客にとって忘れられない特別な体験となることを目指します。また、観光客同士の交流も促進され、地域全体が温かく迎え入れる雰囲気を作り出す予定です。他にも、観光とスポーツを結びつける里山を舞台にしたトレイルランニングイベントやグランピング、木工体験を組み合わせた家族向けアクティビティなどの案があがっていました。
「MYOKO MEET UP #03」を通じて、妙高市が持つ自然や地域資源の可能性が、参加者のアイディアによってさらに広がりました。