【参加者レポート】SAGA Smart Terakoya「第5回 今日から実践できる案件獲得方法」

はじめに

2024年11月22日、佐賀県主催の「SAGA Smart Terakoya」第5回が開催されました。株式会社トレジャーフット代表・田中祐樹氏が講師を務め、案件獲得や顧客対応の実践的ノウハウを詳しく解説しました。

第一部:攻めの案件獲得

田中氏は案件を獲得するための具体的な手法として、3つのアプローチを紹介しました。

1.人脈を活用した案件獲得

データによると、案件の61.6%は「人脈」から発生しています。これはフリーランスや個人事業主にとって、信頼できるつながりを築くことが非常に重要だということを示しています。

具体的には、ビジネスコミュニティや経営者団体、地域のネットワークに積極的に参加し、日常的に関係を構築することが、自然と案件獲得の機会を増やす要因になります。たとえば、あるフリーランスは、ビジネスコミュニティで活動を続ける中で業務改善の案件を獲得しました。また、別のフリーランスは、信頼できる仲間と法人を設立し、そのつながりの中で案件の相談を受けて業務を拡大しています。

人脈を活かすには、まず自分自身を知ってもらうことが大切です。そのためには名刺やデジタル名刺(二次元コード付き)を活用し、自身のプロフィールや連絡先、ポートフォリオへのアクセスを簡単に提供することが有効と伝えました。

2. 営業感のない自然なアプローチ

「営業」と聞くと、多くの人は苦手意識を感じてしまいます。しかし、売り込みではなく相談として話を持ちかけることで、相手が自然に耳を傾けてくれるようになります。

例えば「個人で仕事を始めたので、一度ご相談させていただけませんか?」などのように、軽く相談する形でアプローチすることで、相手にプレッシャーを与えず、話が進みやすくなるのです。

また、有益な情報を継続的に発信することで、自分が第一想起される存在になることは重要です。便利なツールの紹介や注目情報の提供など、相手に役立つ内容を共有することで印象を強め、相談や依頼の際に最初に思い浮かべられる人物を目指しましょう。

3. マッチングプラットフォームの活用

人脈だけでなく、最近ではマッチングサービスを活用して案件を獲得する人も増えています。例えば、代表的なものは下記でしょう。

・クラウドワークス:国内最大級の案件数を誇り、多様な分野の仕事が見つかる。
・複業クラウド:企業からスカウトを受ける仕組みが特徴。
・サンカク:手数料が少なく、地方の事業者にも使いやすい。

マッチングサービスは、案件獲得だけでなく「市場調査」としても有効です。

・同じスキルを持つ人がどのくらいの料金でサービスを提供しているのか?
・どんなスキルが市場で求められているのか?

これらを確認し、自分のスキルや料金設定を見直すことで、より効率的に案件を獲得できるようになります。

ワークショップ:相談メッセージの作成

ワークショップでは、参加者が前職の上司や同僚、趣味仲間など「相談しやすい相手」を5名リストアップし、自然な相談メッセージを作成しました。営業感を抑えたトーンがポイントで、例として「個人で仕事を始めたので、一度ご相談させてください」といった内容が挙げられました。作成したメッセージはペアで共有し、相手からのフィードバックを受けて改善を図りました。

第二部:初回商談から受注までの進め方

1. 圧倒的な自己開示

フリーランスは企業の「看板」がないため、信頼関係を築くには自己紹介が欠かせません。自己開示を丁寧に行うことで、初対面でも安心感を与え、次に繋がる可能性を高めます。以下は、商談の場で自己開示として取り入れる内容の一例です。

・経歴や実績:「何を成し遂げてきたか」を具体的に説明する。
例:「前職では〇〇のシステム開発を担当し、〇%の効率改善を実現しました」
・人柄や価値観:「大切にしている考えや姿勢」を共有する。
例:「クライアントとの信頼を第一に考え、丁寧なコミュニケーションを心がけています」
・興味や趣味:パーソナルな話題を盛り込み、相手との距離を縮める。
例:「趣味は〇〇で、共通点があれば嬉しいです」

初回商談では、自己開示に30%(約15~20分)を使い、信頼構築を優先します。提案やビジネスの話は最後の10分程度に絞り、相手が負担を感じないようにまとめることがポイントです。

2. ミスマッチを防ぐ提案方法

初回商談後、企業に価格や条件を明確に示すことが受注の鍵です。フリーランスの価格感に馴染みがない企業には、小規模で低リスクな提案が効果的です。「初回は事例作りとして〇〇円で対応します」や「短期間で実績を出し、継続を相談させてください」などが挙げられました。これにより、依頼の心理的ハードルを下げ、信頼関係の構築と継続契約につながります。

3. FFR(フリーランス・フリーライド)を防ぐ

フリーランスにありがちな「無償労働」を防ぐためには、無料対応の範囲や条件を事前に明示することが重要です。

具体的な対応方法として、初回相談は3回まで無料とし、それ以降は有償での対応とするルールを設定することが効果的です。また、業務を開始する前に事前に見積りを送り、相手から合意を頂いてから対応を進めるようにします。

これらの明確なルールを設けることで、無料対応の範囲と有料対応の区別を相手に理解してもらいやすくなり、無償対応の負担を軽減できます。その結果、安心して業務に集中できるだけでなく、信頼関係の維持にもつながります。

第三部:顧客満足度の高め方

勝てるプロジェクトは開始前の設計でほぼ決まります。目的や計画を事前に明確にし、方向性を共有することでスムーズな進行が可能になるためです。また、開始時の準備が整っていれば、トラブルや調整の負担も軽減されると田中氏は伝えました。
以下は、顧客満足度を高めるための具体的なポイントです。

1. 目的・目標の明確化
プロジェクトを成功させるためには、合理的計算型目標とビジョン型目標の2種類を設定し、クライアントの期待を整理します。

・合理的計算型目標の例:「エリア内の滞在時間を130%増加させる」
・ビジョン型目標の例:「訪れたくなる魅力的な街づくりを実現する」

目標を明確にすることにより、チーム全員が同じ方向を目指して進める体制を構築できます。

2.現状の把握と進行計画の策定
クライアントの現状や課題を正確に把握し、月単位の進行計画を逆算で立てます。この際、WBS(Work Breakdown Structure:作業を階層的に分解して整理する手法)を活用することで、各タスクの詳細を明確化し、進捗を可視化します。これにより、クライアントとの共有や管理がスムーズになります。

3.期待値の管理
期待値を上げすぎないよう調整し、実際の成果がそれを上回ることを目指します。プロジェクト開始後3か月以内に目に見える成果を示し、定期的な報告を通じて信頼を深めることが重要です。

4.フィードバックの収集と対応
月次報告でクライアントからのフィードバックを収集し、業務改善に活用することで、顧客ニーズに的確に応えます。

「実践を続ければ1年後には成果が出ます。信頼を積み重ね、相談時に真っ先に思い浮かぶ存在を目指しましょう」と田中氏によって本講座は締めくくられました。

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