■はじめに
11月21日(木)、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代における人材戦略をテーマとしたセミナー「企業の生産性を向上するDX時代の人材戦略〜事例から学ぶ効果的な外部人材活用とは?〜」が開催されました。
本イベントは、DX推進に強い関心を持ちながら、「自社内に十分なノウハウがない」「必要なスキルを持つ人材を確保できない」といった悩みを抱える企業の方々を対象に企画されたものです。ここでは、外部人材活用が注目される背景と、佐賀県で積極的に進められている人材マッチングの取り組み、そして当日のセミナーやパネルディスカッションで共有された「リアルな声」をお伝えします。
■外部人材の現状と佐賀県の取り組み
近年、業務改善や新規事業創出など、DX推進は企業にとって避けては通れぬ課題となっています。しかし、社内リソースのみで新たなプロジェクトを動かそうとすると、人的・ノウハウ的な面でリソース不足に直面してしまいがちです。
そこで、現在注目されているのが「新しい人材戦略=外部人材活用」です。
そもそも外部人材活用とは、自社内の正社員以外の専門家や人材(派遣社員、フリーランス、外部専門家など)を活用することで、必要なスキルや労働力を柔軟に補う手法のことです。その効果を最大化するには、まず「プロジェクトテーマ」や「期待する成果」を明確にすることが不可欠です。こちらの重要性については、別途解説していますので、是非ご一読ください。
>外部人材活用時に必ず必要な「プロジェクトテーマ」の決め方とは?
こうした中、佐賀県では約6年間にわたりDX推進に注力しており、情報発信や支援活動を通じて、企業がDXの必要性やメリットを理解する土壌を育んできました。その一環として展開しているのが「SAGA Smart Terakoya」です。
「SAGA Smart Terakoya」では「起業したい」・「複業を始めたい」といった佐賀県の人材に、「自己の商品化」や「プロジェクトの進め方」など、外部人材として活躍するために必要なスキルやノウハウを提供してきました。
その結果、企業とのマッチング事例が30件以上生まれ、ITスキルを活用した業務改善支援、デザイン制作(名刺やロゴ)、SNS運用、広報サポートなど、さまざまな業務領域で「SAGA Smart Terakoya」の受講生が活躍しています。
こうしたプロジェクトに共通しているのは、企業が抱えている課題が「緊急度は低いが、確実に手をつけたいもの」である点です。こうした領域は社内リソースが手いっぱいな場合、どうしても後回しになりがちですが、外部人材を活用することで、必要なタイミングでスキルやノウハウを獲得でき、成果物を受け取ることができます。
例えば、あるスタートアップ企業では、初のプレスリリース作成時に社内に広報経験者がおらず、効果的な広報活動に課題を抱えていました。そこで、「SAGA Smart Terakoya」の広報スキルを持つ人材を試しに起用したところ、人柄やスキルのフィット感から「単発のプレスリリース作成」という案件から、外部マネージャーのような形で関わる案件に発展していきました。こうした成功例が徐々に蓄積される一方、「外部人材活用って具体的にどう進めたらいいの?」と悩まれている企業もまだ多いのが現状です。
「SAGA Smart Terakoya」の受講生へ既に案件を依頼されている企業は、比較的外部人材活用への心理的ハードルが低く、社内で「この課題は、自社の人材ではノウハウが不足しているため、外部人材へ依頼してみよう」と踏み切っているケースが目立ちます。
しかし、佐賀県内全体に目を向けると、「DX自体は理解できたが、DX推進には人手やノウハウが不足している」という企業も多く存在します。
そこで今回のセミナーでは、まずは自社課題の解決に役立つ外部人材活用を「知ってもらう」ことを目的として開催されました。
■第1部:外部人材活用セミナー
第1部では、外部人材活用の基本的な考え方やメリット・デメリット、効果的な進め方を紹介しました。
そもそも外部人材活用とは?という基本的な問いでは、講師である弊社代表の田中より「社内、社外の垣根を越えてチームを作る、新しい会社の在り方」をお伝えしています。
さらに、外部人材活用に注目が集まる理由としては、①少子高齢化にともない、生産年齢人口が減少している・②優秀な人材の正社員採用ハードルが上がっている・③コロナ禍を経て雇用に縛られない働き方を選択する人が増えている、という3つを挙げました。
また、実際に外部人材活用を行うにあたって、メリット・デメリットも述べました。
例えば、前述したとおり業務整理を実施し、「プロジェクトテーマ」や「期待する成果」を明確にすることは必要不可欠ですが、この準備自体が外部人材活用時のハードルになっているとも言えます。しかし、外部人材はプロジェクトベースや短期契約での雇用が可能なため、業務の需要に応じて柔軟に人材を配置できる点や、社内のメンバーだけでは気づきにくい課題や改善点を指摘してもらえるという大きなメリットもあります。
こういったメリット・デメリットを把握し、効果的な外部人材活用を行うことは、会社の成長に大きく関わってくることでしょう。
参加者からは「外部人材活用を検討しているため、具体的に理解できた」「外部人材の適切な使い方を知ることができた」といったポジティブな声が多数寄せられました。
■第2部:パネルディスカッション「外部人材活用のリアル」
続くパネルディスカッションでは、実際に外部人材活用を進めている事例が紹介されました。
登壇したのは、ローコードツールによる地方中小企業のDX推進スペシャリストである滝田一馬 さん、そのクライアント企業である大栄電通株式会社 DX事業推進室の矢羽田夕貴さん、そして 「SAGA Smart Terakoya」受講生の鈴木美弥子さんです。
ここでは実際に企業が抱えている課題感や、なぜ外部人材である滝田さんへ発注するに至ったのか、といった「リアル」なエピソードが共有されました。
大栄電通株式会社様のケースでは、社内上層部によって当初「自社業務は自社の人間が一番理解している」と内製化が望まれていました。しかし現場の担当者は「導入したローコードツールの使い方を体系的に教えてくれる『先生』がほしい」と感じており、両者のギャップを埋めるために滝田さんが外部支援者として参画したという背景があります。
滝田さんはノウハウを企業内に定着させるスタイルで支援し、結果的に社内の自走化に成功しました。
通常、コンサルタントは自身が持つノウハウを外部に流出させることを嫌がるケースもありますが、滝田さんはあえてスキルを「地産地消」できるように、自身の下についた「SAGA Smart Terakoya」受講生にも知見を共有してくださいました。その結果、地域全体でDX推進スキルが循環し、より多くの企業が恩恵を受けられるという環境が整いつつあります。
参加者からは「もっと詳しくリアルを知りたい」という声もあり、今回のディスカッションは外部人材活用の「生の理由」や発注の決め手が明らかになる貴重な機会になりました。
また、鈴木さんからは「SAGA Smart Terakoya」受講生たちの多様なスキルセットが紹介されました。自身も外部人材として様々な案件に取り組んでいる鈴木さんから、佐賀県内に外部人材として活躍できる人が多数存在するという事例を紹介いただくことで、「ITスキルの地産地消」に向けた動きは、更に加速を見せるのではないでしょうか。
都市部から遠隔で外部人材を呼び込むだけでなく、県内に根ざした人材が身近な距離でサポートしてくれるという強みは、地域のDX推進において大きなアドバンテージとなっています。
■まとめ
今回のイベントを通じて、外部人材活用が「課題解決のための単発発注」から「社内スキル定着」「地域全体のノウハウ蓄積」へと広がる可能性が示されました。DX時代の人材戦略は、単に外部スキルを借りるだけでなく、長期的な視点で社内外の知見を循環させることが重要です。
もし外部人材活用に興味があれば、まずは「SAGA Smart Terakoya」のパートナー企業として登録してみませんか?
パートナー企業は佐賀県の企業でなくてもご登録可能です。新たなネットワークが、DX推進と企業成長への道を開くかもしれません。ぜひ「知る」ことから始め、自社の無限の可能性を広げていきましょう!