2024年10月8日、福島県主催のオンラインイベント「自分らしい暮らしの叶え方とは?」が開催されました。本セミナーでは、移住者が自分に合った暮らしをどのように実現したかをテーマに、参加者が理想のライフスタイルを考えるきっかけが提供されました。登壇したゲストスピーカーは、福島県浪江町で自然と触れ合いながら生活する塩野美里(しおの・みさと)さんと、福島県のコミュニティ作りを推進する葛西優香(かつにし・ゆか)さんです。イベントには全国から二拠点生活や自然との調和を求める参加者が集まりました。
福島県の3つのエリアに見る多様な魅力と暮らしのスタイル
まずは、福島県ふくしまぐらし推進課の阿部さんが、福島の地域資源と特色についてプレゼンテーションを行いました。福島県は「会津」「中通り」「浜通り」という3つのエリアに分かれており、それぞれ異なる自然環境や文化が根付いています。
・会津: 会津エリアは四季折々の自然景観が美しく、鶴ヶ城などの歴史的建造物も多くあります。冬にはスキーやスノーボードを楽しむ人々が集まり、山々の豊かな自然に囲まれた静かな暮らしが魅力です。さらに、日本酒の名産地としても知られ、日本酒愛好家にとっては「会津の酒蔵巡り」が大きな魅力となっています。
・中通り:中通りエリアは新幹線や高速道路が通っており、福島市や郡山市、白河市などの都市が存在します。都会的な利便性と田舎らしい自然が共存するため、「半いなか暮らし」を望む方には最適です。農産物も豊富で、果物の栽培が盛んな福島市には「フルーツライン」と呼ばれる道があり、桃やりんごなどのフルーツがたっぷり楽しめます。
・浜通り:浜通りエリアは太平洋に面し、温暖な気候と豊かな海産物が特徴です。震災以降、再生可能エネルギーやロボット産業が進出し、新しい産業と伝統が融合する地域として注目されています。また、常磐ものと呼ばれる海の幸や美しい海岸線もあり、サーフィンなどのマリンスポーツも楽しめる地域です。
阿部さんは「東京から新幹線で1時間半という距離感は、二拠点生活や週末移住にも理想的です」と述べ、福島の利便性と自然環境の魅力を強調しました。
福島への移住体験談:都会から地域へ、心豊かな暮らしへの転換
塩野美里さん(元浪江町地域おこし協力隊):「都会の喧騒を離れて自分のペースで暮らす」
塩野さんは埼玉県から福島県浪江町に移住した理由と現在の生活について語りました。東京での激務から解放され、自然と触れ合う暮らしを始めたことで「心身ともに充実感を得られた」と言います。移住前は、新宿のビル群の中で長時間働き、平日は家に帰ると疲れてすぐに眠り、休日も休息で終わってしまう日々が続いていました。そんな生活から抜け出し、今は元地域おこし協力隊として観光支援や防災教育に携わり、地元の住民とも温かいつながりを持ちながら、心にゆとりのある生活を楽しんでいます。
葛西優香さん(株式会社いのちとぶんか社):「災害の経験から、地域と助け合う生活の大切さを実感」
一方、葛西さんは、阪神・淡路大震災と東日本大震災という2つの災害を経験し、地域で助け合うことの大切さを強く感じ、福島への移住を決断しました。彼女は災害時に「本当に頼れるのは、地域の人との結びつきである」と話し、防災やコミュニティ作りに尽力しています。現在は福島県浪江町の「いのちとぶんか社」の取締役として、防災を中心とした地域活性化プロジェクトに関わり、災害に備えた街づくりを推進しています。
Q&Aトークセッション:移住に向けた具体的なアドバイス
その後のQ&Aセッションでは、移住に関する具体的な質問が多く寄せられ、ゲストの塩野さんと葛西さんが、実体験を交えたアドバイスを提供しました。
Q:移住に向けて準備しておくべきことは?
塩野さんは「現地の人との接点を持つことが大切」と述べ、地域の雰囲気を知るためにも、お試し移住を活用して短期間の滞在をおすすめしました。「地域コミュニティと接点を持つことで、移住後もスムーズに生活を始められます」とアドバイスしました。
Q:仕事と家庭生活の両立に不安があるが、バランスの取り方は?
葛西さんは「リモートワークを活用して現在の仕事を続けながら、福島での生活を体験することが効果的」と助言しました。特に福島はインフラが整っているため、仕事と自然の両立が可能で、週末移住や短期間での移住から始めるステップも推奨しました。
Q:子供の学校環境が心配だが、地域に馴染めるか?
葛西さんは「福島では地域全体で子どもを支える文化があり、学校や行事を通じて自然と地域に馴染むことができる」と説明。自分の災害時の経験をもとに、「お子さんも学校生活を通じて豊かな自然環境に慣れ親しむことができるでしょう」と安心感を与えました。
Q:浪江町での移動手段について知りたい
地域内では車が主な移動手段で、自家用車があると便利と説明がありました。また、住民同士での送迎協力などの文化が根付いており、コミュニティの助け合いによって安心して生活できることが示されました。
妄想ワークショップ:自分らしく居られるのはどんな場所?
イベント後半の「妄想ワークショップ」では、参加者がチャットを通じて理想の暮らしについて自由に語り合いました。3つのテーマに沿って、具体的なビジョンや不安が共有され、理想の生活をイメージする時間となりました。
1.大事にしたい価値観や暮らし方
「自然と調和した生活」や「家族との時間を大切にしたい」といった価値観が多く、心に余裕を持ちながら地域で支え合う暮らしを理想とする声が目立ちました。参加者の多くが、福島の環境と自分の価値観が重なることに関心を持っていました。
2.どんな暮らしをしたいか(いつ・どこで・誰と・なぜ)
「福島の白河市で四季を感じながら家族と穏やかに暮らしたい」「自然豊かな環境で子供をのびのび育てたい」など、福島の地域特性と結びついた理想像が語られました。こうした具体的なビジョンを共有することで、参加者は自身の理想の暮らしをより明確に思い描くことができました。
3.理想を実現するための不安要素
理想の生活に向かう上で、参加者からは「仕事と家庭の両立」や「地域社会への馴染み方」に対する不安が多く挙げられました。また、子供が新しい学校環境に適応できるか、移動手段が限られる地域での生活支援が必要といった声も聞かれました。
こうした不安に対し、ゲストからは「お試し移住で現地の生活を体験する」「地域の行事に参加して人とのつながりを深める」といった具体的な解決策が示され、理想と現実のギャップを埋める方法が提案されました。これにより、参加者たちは移住後の生活をよりリアルにイメージし、現実的な課題に備えるための対策を得ることができました。
このセミナーを通じて、福島は単なる「移住先」にとどまらず、「自分の理想を叶えられる場所」として多くの参加者にとって魅力的な選択肢となりました。