【社長インタビュー】なぜ地場産業の支援を目的に経営をしているのか。現在と未来のトレジャーフットについて

ーーー まずは、田中さんが、なぜ「地場産業」の支援を目的にしてに経営をしてきているのか、その理由や意味を聞かせていただけますか。

トレジャーフットは、経営理念を「新しい働き方を創造し、地場産業の発展に貢献する」と掲げていますが、基本的には「地域の発展・地場の産業の発展」という点に全てが集約されています。

そもそもやりたいことは、地域で継続性の高いビジネスを作り、いい循環を生み出すことです。それが地域活性において最も重要なことだと感じてます。国の予算、行政の補助金を原資に発展していったとしても、継続するのが難しい場合があります。

「地域の発展・地場の産業の発展」により、そこに雇用が生まれ、税金が落ち、場合によってはその地域が有名になることもあるかもしれません。こうした「好循環」を目指して、もがき続けています。

ーーーそう考えられた背景には、田中さんのどんな原体験がありますか?

私は大阪で働き始めて、その後転職を機に沖縄へ行ったんです。あまりそういう移動をする人がいなかったので、周りからは、「すごい決断だね」と言われていたのですが、自分では全く違和感のない決断でした。「働きたい会社」があったからです。

地域に良い仕事があれば、人を惹きつけるのだと感じています。北海道でも沖縄でも九州でもどこでも、同じです。

自分が満足できる仕事がない、活躍できる仕事がない、熱中できる仕事がない。だから地元に帰らない、地方に行きたがらないという人も多いのではないかと思っています。

ーーー 社員の私たちは、田中さんと話しているなかで「不条理嫌い」という印象が強いのですが、現在の仕事と関係していますか?

そうですね、一般的な性格で言うと、「正義感が強い」みたいなところがあるかもしれません。いじめられているとか、住む場所が勝敗を分けるとか、何かそうした不条理だと感じる出来事に対して、「何とかしなきゃ」「俺に何かできないのか」という気持ちが湧いてくるようなタイプなんです。

ただ、この性格自体は別に珍しいことではないと思っています。例えば、発展途上国を支援したいという思いを持っている人や、JICAに行ってる人、あとはNPOで働く人なども、もしかすると同じような気持ちを持っているかもしれません。

私がその気持ちをブレずに持ち続けているのは、自身の原体験が関係しています。小学校4年生の時に、父親を突然事故で亡くしました。世の中は本当に、不条理だな、「なんで俺にこんなことが起こるんだ」と、すごく腹が立ちました。でも、その思いを誰にもぶつけられなかったんです。

その後、大学で地域政策を学んだ時や、社会人になるにつれて「東京が偉い」といった風潮を感じるたびに、こうした不条理に対する怒りと、なんとかしたいという思いが生まれていました。

結果的に、トレジャーフットの創業につながっていると感じています。

ーーートレジャーフットのカルチャーについてお伺いしていきます。まずはミッションとビジョンについて教えてください。

ミッションは「新しい働き方を創造し、地場産業の発展に貢献する」としています。「古い働き方」ではなく、成果にコミットすることがかっこいいと思っています。

こうした働き方をしながら、地域の企業の素晴らしさや可能性をもっと世の中に伝えていきたいです。

トレジャーフットには「4700の地場産業プロジェクト創出」というビジョンがあります。4700という数字は47都道府県から来ており、各都道府県で100プロジェクトを行うことで4700件のプロジェクトが生まれる計算になります。

もし仮に47都道府県にそれぞれ100プロジェクトが実現したら、私たち経由で仕事をしている仲間が、少なくとも1都道府県あたり100人いることになります。私はこのプロジェクトに入った人材がその地域で関わることで、地域に残るコミュニティや経済圏ができると思っており、目指しています。

ーーー 創業後のトレジャーフットの「変遷」をどのように捉えていますか?また、地域との関わりという意味では変化した部分や広がったところはありますか?

現在7期目で、次の12月を越すと8期目になります。30歳で立ち上げたので、38歳になります。本当にあっという間です。

今感じるのは7年続けてきたからこそ、「新しい働き方を創造し、地場産業の発展に貢献する」という理念に近づいてきたかなという気持ちがあります。

コロナがあったり、社員が退職したり、色々な紆余曲折がありましたが、今やってる取り組みが全てつながり、どんどん価値が出てきてるなという印象です。行政や企業など、関わってくださる方がどんどん増え、より経営理念に近づくことができています。

ーーー 地域と関わるなかで、大切にしていることは何ですか?また、どこに最も大きな魅力を感じていますか?

トレジャーフットの未来やビジョンの一つとして、国や都道府県が形式的に決めた枠組みに「良い意味ではまらない」ということを大切にしていきたいと考えています。

地域を元気にする枠組みといったものを考えるなかでよくあるものとして、「この県だから、この県の予算でこれをやってね」といったものがあります。しかし、こうした考え方では、住む場所によって可能性が狭められてしまっています。予算のある都市部が勝つことが多くなってしまうのです。

トレジャーフットは、地域で何か面白いことをやっていこうとしている人たちをネットワークとしてまとめて、その中で相互扶助の関係を作りながら進めていくことに、大きな魅力を感じているんです。

例えば最近は、佐賀、横須賀、高松、福島などで、コミュニティ作りなどの事業をやらせてもらっているのですが、コミュニティの中での相互扶助の関係性やエコシステムに、非常に価値があるなと思っています。

ーーー トレジャーフットを創業して、さまざまな変化がある中で、一番辛かったことはどんなことですか?

コロナで緊急事態宣言に入ったときですね。当時は現在のようにマッチング事業コンサルティング本部が大きくなく、小さな会社でした。大口のお客様がフェリーや鉄道などのインフラ関係だったのですが、コロナによってプロジェクトが一気に終わり、急に売り上げがなくなってしまいました。

プライベートでも、妻が第2子の妊娠中だったのですが、切迫早産しそうになり、結果として100日程度入院することになりました。

「疎開だ!」と言って京都の実家に帰り、保育園が閉まってるので、子どもを母に見てもらいながら仕事をするのですが、肝心の仕事がない。血便が出て、蕁麻疹も出るほどのストレスでした。

ーーー それは大変でしたね。… 反対に、「すごくよかったこと」も聞かせてください!

「僕が仕事がない」ということは、事業モデルとして「フリーランスとして活動しているプロ人材の人たちも仕事がなくなってしまう」という構造になります。

なので、業務委託の方にも、お仕事のお断りの連絡を全部入れる必要がありました。それも辛い状況です。ただ、お互いに仕事がなくなっているので、共感する、同志になるという関係性になりました。

プロ人材の方々全員とやりとりをして「仕事はないですが、何かしたいですよね。今は経済活動で外にも出れないんだから仕方はないけども、何かしましょう」という話をしました。

今の自分たちが日本のためにできること、ということで、リモートでもできる仕事や、オンラインでモノをどう売っていくのかなど、思考を広げていきました。

結果として、そうしたその道のプロの方と、一緒に無料ウェビナーを実施し、広告費ゼロで毎回80社程度を集客することができました。ビジネスというよりかは無料でもできること・伝えられることに注力していたのです。

結果として、そこに来てくれた人からの「ありがとう」がお取引につながっていきました。コロナ禍ではありましたが、前年比260%の売上になった時期もありました。「災い転じて…」ではないですが、一心不乱にできることは何だろう、と考えた先にこうした結果が待っていたので嬉しかったです。

ーーー 「T理論」というものがあると思うのですが、T理論の現在地と未来について、どのようにみていますか?

T理論は、1年ほど前に考案しましたが、まだまだ発展途中です。

マッチング事業や、人材育成事業、コミュニティ事業など、各個別に見ていくと競合はあるのですが、これらを「1サービス」として、トレジャーフットがやることに意義があると思っています。

そしてゆくゆくは、トレジャーフットの事業の一部を地域の方に担ってもらいたいと思っています。

現在の構造だと、我々トレジャーフットという神奈川県鎌倉にある会社が中心です。都市部が儲かる、これこそ自分自身も一極集中に加担してしまっているわけです。

そうではなくて、地域側で事業をやってる方々がトレジャーフットの事業の一部を担って、フランチャイズとして事業や考え方、T理論を実装する。こうした構造にすれば、地域側に売りは立つし、スキルだけではなく、ビジネス自体も地産地消をすることができます。今よりも、より地域が活性化するのではないかなと思っています。

ただ、トレジャーフットとしても何度も挑戦していますが、まだうまくいっていません。なかなか大変なことだと認識していますが、ぜひ続けていきたいです。

ーーー ありがとうございます。トレジャーフットの長期的な展望はありますか?

今年の秋から新規事業として、新たにM&A事業を始めようとしています。
事業を続けることができない地方の企業が今後増えてくると言われており、地域の産業の逼迫する課題だからです。

地域の企業様に向けの外部人材活用を約7年間行ってきましたが、企業様にとって外部人材は、一緒に事業を経営をしているわけでも、リスクを分け合っているわけでもないため、外部人材としての域を出ることはないことが多いのです。

しかし、もし一緒にリスクを分かち合いながら事業に取り組んでくれるとしたら、地場の企業にとっても嬉しいのではないでしょうか?

例えば株式を譲渡するなどの方法もあるかとは思いますが、企業様と共に経営したり、事業再生をしたりなど、より深く地域の地場産業の支援に入るために、M&Aという手段を使って取り組んでいきたいです。

ーーー 最後に、トレジャーフットで働くことの価値は何ですか?

地域社会に貢献することができるのはもちろんですが、私としては、トレジャーフットの考え方や社員が持つ空気感にこそ大きな価値があると思っています。

この前、社員研修で社員の一人が、トレジャーフットの価値を一言で表すとといった問いに対して「資本主義ではなく本質主義」と言ってくれたことがありました。

もちろん世の中は資本主義で会社は回っていますし、この考えがあるからこそビジネスが成立しているのですが、社員が口を揃えて、資本主義に目をむけるだけではなく、物事にある本質に価値を見出していこうと言ってくれた。

ビジネスとして成立させることも追い求めるだけではなく、トレジャーフット独自の哲学や美学を実現するために挑戦できる環境や、それらをフラットに発言できるような社内の空気感こそ、トレジャーフットで働くことの価値なのではと思います。

「明るく元気で素直な方」にぜひ入社していただきたいです。

地域に対して思いを持ち、日本の明るい未来をより良くしていくために、人生の大切な時間を過ごしてくれるような方と一緒に仕事ができたら嬉しいです。

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