イベント概要
「妄想仕事図鑑 in 福島」は、福島県との関わり方を自由に考えるイベントです。「移住?二拠点?福島への想いと関わり方」をテーマに、スキルや興味を活かす方法を探りました。会場はふるさと回帰支援センター(東京・千代田区)とオンラインのハイブリッド形式で開催され、司会はトレジャーフットの斉藤晃久が務めました。
福島県の魅力と暮らしの可能性
福島県は「浜通り」「中通り」「会津」の三つのエリアに分かれており、気候や文化が異なるのも特徴です。海沿いの浜通りは、サーフィンや新鮮な海産物が楽しめる地域です。中通りは、福島市を中心にカフェ文化が広がり、桃やリンゴなど果物の名産地としても有名です。会津地方は、日本酒の名産地として知られ、冬にはスキーやスノーボードが楽しめます。最近では、アウトドア、サウナやおしゃれなカフェが増え、移住者にも人気です。特に、「テレワークをしながら地方で暮らす」という新しいライフスタイルを実践する人が増えており、従来の「移住」の概念にとらわれない柔軟な暮らし方が広がっています。
ゲストトーク 「体験者のリアルな話を深掘り」
地域でしか味わえない面白さを求めて
~南郷村(現・南会津町)にUターンし、起業という選択~
芳賀有貴哉さん
南会津町出身の芳賀有貴哉さんは「100年後も続く地域をつくるためには、仕事を生み出すことが大切です」と語ります。大学卒業後、一度地元を離れ、海外で働いた後に地元に戻り、起業する道を選びました。その背景には、強い地元への思いがありました。
「もともと地元への愛着は強かったです。だからこそ、活力を失っていく様子を見て、『自分が何かしなければ』という気持ちが大きくなっていきました」
芳賀さんは、音楽活動や海外生活を経験しながら、自由に挑戦を続けていました。しかし、次のステップを考えたとき、「やっぱり地元に戻ろう」と決意しました。
「友人の中には『帰りたいけど、仕事がないから帰れない』という人も多かったです。だったら、自分が仕事をつくる側になろうと決めました」
現在、南会津町で地域資源を活かしたアウトドアプログラムや企業研修を展開し、都市と地方をつなぐ仕組みづくりに力を入れています。
「都会ではお金を払って得るものが、地方では当たり前にあります」
そう語る彼は、薪を拾う、川魚を釣るといった自然の中での暮らしを大切にしながら、地域の新しい可能性を探り続けています。
福島を再発見。上京と二拠点生活がくれた新しい価値観
~地元福島のまちづくりに挑む~
久間木壱成さん
「地元が嫌いだったからこそ、都市計画に興味を持ち、まちづくりに関わるようになりました」
そう語るのは、福島市出身の久間木壱成さんです。現在、東京と福島の二拠点生活を実践しながら、福島駅前の再開発に携わっています。
「子どもの頃、地元がどんどん衰退していくのを目の当たりにし、東京のダイナミックな街並みと比較して、福島には未来がないと思っていました」しかし、大学時代に地域産品のショップ運営に関わったことで、彼の価値観は一変しました。
「地元を良くしようと本気で行動している人がいる」と気づき、福島との関わり方を見直すようになりました。
現在は都市計画の視点から、福島駅前の歩行者空間の活用や商業エリアの活性化を推進しています。
「移住することがゴールではなく、新しい価値を生み出すことが大事です。住む場所に縛られず、都市と地方をつなぐ存在として関わることも、地域との向き合い方の一つだと思います」
質問タイム –参加者の疑問とゲストの経験を深掘り
ゲストトークの後、参加者からの質問タイムが設けられました。会場の参加者だけでなく、オンライン視聴者からもチャットを通じて質問が寄せられ、ゲストの芳賀さん、久間木さんがそれぞれの経験や考えを交えて回答しました。
Q1. 移住前後で地元の印象はどう変わりましたか?
芳賀さん:「元々地元が好きで、地域に貢献したいという思いがありましたが、実際に戻ってみると、人口減少や高齢化、仕事の少なさなどの課題が多く、やるべきことがたくさんあると実感しました。特に、地元の産業をどう維持していくかが大きな課題であり、移住者が地域にどのように関われるかを考え続けています」
久間木さん:「私は逆に、地元に対してネガティブな印象を持っていましたが、東京で暮らすうちに福島の魅力を再発見しました。地域の人々がまちづくりに本気で取り組む姿を知り、『自分も何かできることがあるのでは』と思うようになりました。特に、地域産品を扱うショップでの経験がきっかけとなり、地元の価値を改めて認識するようになりました」
Q2. どのようなスキルが現在の暮らしに役立っていますか?
芳賀さん:「企画力やマネジメント力を活かし、アウトドアプログラムや企業研修を展開しています。地域資源を活かしたチームビルディング研修を通じて、都市部の企業と地域を結ぶ活動を進めています」
久間木さん:「データ分析や行政との交渉力に加え、地域の人々の声を聞きながらまちづくりを進める姿勢が大切だと考えています。福島駅前の再開発では、住民の意見を取り入れながら、歩行者空間の活用や商業エリアの設計を行っています」
Q3. 同年代で同じ価値観の人はどれくらいいますか?
芳賀さん:「すごく多いわけではありませんが、ゼロではないですね。同じ思いを持つ移住者と共に、新しい事業の立ち上げや地域イベントの企画に取り組んでいます」
久間木さん:「福島に戻って何かをしようとする人たちとつながることで、仲間が増えていると感じます。まちづくりに関わる若手のネットワークも広がっており、互いに刺激を受けながら活動を続けています」
Q4. 移住や二拠点生活を考えている人へのアドバイスはありますか?
芳賀さん:「まずは短期滞在をしてみることをおすすめします。地域のイベントに参加したり、短期間住んでみたりすることで、自分に合う環境かどうかが見えてきます」
久間木さん:「東京と福島を行き来する場合、移動時間や頻度を考えながら、福島での活動と東京での仕事のバランスをどう取るか試行錯誤することが大切です。私自身、新幹線を活用して週の半分を福島で過ごし、リモートワークと現地のプロジェクトを両立させています」
妄想ワークショップ:「あなたなら、福島とどう関わる?」
後半では、参加者自身が「福島とどのように関わることができるか?」を考えるワークショップが行われました。このワークショップの目的は、「移住するかしないか」ではなく、「福島と自分の興味やスキルをどう結びつけるか?」を探ることです。参加者は、自分が福島と関わる姿をイメージ(妄想)しながら、以下のポイントを具体的に考えました。
・いつ:どのタイミングで関わるのか?(季節やイベント、ライフステージなど)
・どこで:どの地域・場所で実践するのか?
・どんなことをするのか?:自身のスキルや興味を活かして、どのような活動ができるのか?
さらに、アイデアを実現する上での課題を整理し、解決策を検討しました。「福島との関わり方にはさまざまな可能性がある」ことを実感し、それぞれのライフスタイルに合った関わり方を探る場となりました。