鳥取県では、プレシニア層を対象にデジタルスキルの向上と再就職・キャリア変更の機会を提供するプロジェクトを行いました。この取り組みは、高齢化が進む地域社会において、デジタル変革(DX)とリスキリングの必要性が高まっている現状を背景として開催されました。
特に、定年退職後も活躍の場を求めるプレシニア層にとって、新たなスキル習得は生活の質を向上させる重要な要素となります。
体験を通じて、DX推進を身近なものに。
本プロジェクトは、鳥取県とトレジャーフットとの協働で行なわれました。
企業組織内でのデジタル変革(DX)とリスキリングの推進を加速させるため、特にデジタル分野に不安を感じるプレシニア層を対象に講演会や体験会が実施されました。体系的な理解を深め、各個人が自身の役割に応じたDXの活用方法、方向性を見出せるように支援することを目的としています。
プロジェクト内の講演会では、経営層や管理職に多いプレシニア層向けに経営改善を主眼に置き、体験会では、「効果的な手段」としてのDX推進方法やツールの学ぶ機会を提供しました。これらのセミナーは、参加者の所属企業におけるDX推進のきっかけ作りを目指し、Google Workspace、Canva、ビジネスカード管理ツール「eight」などの実践的なツールを通じて、必要とされるスキルを学ぶ機会を実際に体験していただきました。
〈講師一覧〉
〇 株式会社トレジャーフット 代表取締役 田中 祐樹 氏
【登壇実績】
・経済産業省東北経済局 / 秋田県:「これからの時代の外部人材活用セミナー」(2021年度)
・経済産業省東北経済局 / 青森県:「あおもり採用・育成プロジェクト」(2021年度)
・山梨県庁 産業労働部 成長産業推進課:「副業人材活用セミナー」(2021年度)
・長野県テレワークによる多様な働き方普及事業:「在宅ワーカー活用メリット」(2021年度)
・長野県主催 :「企業に必要な人材を集める第三の選択肢とは?」(2022年度)
・株式会社ワコールホールディングス:「キャリアを活かしたリスキリング成功の方程式」(2023年度)
【出版実績】
・『稼げるフリーランスの法則』
(発行元:日本経済新聞出版 / 発行日:2022年8月24日)
〇 TeraGroove合同会社 代表社員 田川 潤一 氏
【経歴】
1992年~2023年:パナソニック株式会社
・パナソニックコネクト株式会社
現場ソリューションカンパニー サービス&ソフトウエアプラットフォーム本部
データサービス開発室 室長
・コネクティッドソリューションズ社
現場プロセス本部 AI・IoTソリューション部 部長
プロセスオートメーション事業部 AI・IoTソリューション部 部長
2023年~現在 :TeraGroove合同会社 代表社員
プロジェクト実施内容の詳細
今回のプロジェクトは1回の講演会と3回の体験会の計4回に分けて実施されました。
講演会ではリスキリングやDX化の概要をお伝えし、体験会では実際に自分で作業を行いながら、活用方法を学んでいきました。
講演会:プレシニアの方向け リスキリング推進セミナー
第1回目の講演会は、多くの課題やテーマに⽴ち向かっている経営者層向けに実施されました。
今後の経営戦略の打ち⼿としてリスキリングやDXをどう進め、企業の成⻑にどう活かしていくか、リスキリングでDXは実現できるのかなどをお伝えしつつ、リスキリングとDXの全2部に分けた講演を通じて理解を深めていただきました。
〈内容〉
〇第1部
・リスキリングの概要について
・リスキリングが「人生」、「仕事」、「社会」において注目される理由
・リスキリングの実践 アンラーニングについて
・リスキリングを進める上でのSTEPの解説、業務中に行なえるリスキリングの方法
〇第2部
・DXとリスキリングの関連性
・スモールスタートの重要性
・活用ツールの紹介
特に、第2部のコンテンツでは、DXとリスキリングの両者がどのように連動し、組織内で相乗効果を生むのかを解説しました。その上で、まずは小規模から始め、成功体験を積む重要性とその手法を共有し、実際にDXを進める上で役立つツールを、事例とともに紹介しました。
場所:オンラインにて実施
第1回体験会:リスキリング体験講座/業務効率化ツールGoogle Workspace
第1回目の体験会では、Googleアカウントの設定から、Googleドライブ、Googleカレンダーなどの主要機能を中心にレクチャーと実践を行いました。主要機能の確認後、カレンダーとGooleMeetの連携機能など機能を組み合わせた活用方法も行いました。
セミナーが終わった後、ご自身だけでも活用ができる事を目的に伴走をしながらレクチャーを行なったため、参加者様のご満足度も非常に高い状態でした。
〈内容〉
〇Googleの各アプリの体験
・Gmail
・チャット
・カレンダー
・ドライブ
・ドキュメント
・スプレッドシート
・Meet
・フォーム
〇ツール間の連携
・ファイルをアップロードし、共有フォルダのリンクをGmailで共有
・カレンダーでMeet会議の設定・招待
・チームでの共同作業
・ドキュメントの共同編集
〇無料版Googleアプリと、Google Workspaceとの違い
場所: とりぎん文化会館
第2回体験会:リスキリング体験講座/デザインツールCanva
Canvaは、非デザイナーでも簡単にプロフェッショナルなレベルのデザインが作成できるグラフィックデザインツールです。
さまざまなデザインニーズに対応する幅広いテンプレートとデザイン要素(写真、フォント、アイコン、図形など)を使うことができ、クリエイティブ、プレゼンテーション、ポスター、チラシなどを作成することができます。
第2回目の体験会では、開催場所を鳥取県米子市に移し、企業でコンテンツ作成などを行なっている参加者の方々を中心に、今後、自分たちで発信するチラシやポスターなどの制作方法を伴走しながら学んでいただくことができました。
〈内容〉
〇代表的なユースケースの紹介
・プレゼン資料作成
・写真や動画の加工・編集
・アイディア検討(ブレスト)
〇基本的な使い方
・テンプレート選択
・図形・テキストの編集
・写真の加工
・プレゼン表示・PDF出力
〇Canvaを使ったコラボレーション
・プレゼン資料共有
・共同編集
〇他のツールとの違い・メリット
・PowerPointとの違い
・PhotoShopとの違い
・無料版・有料版の違い
場所: 米子コンベンションセンター
第3回体験会:リスキリング体験講座/名刺管理ツール Eight
3回目の体験会では、SFAツールの意味と活用方法についてレクチャーをすると同時に参加者様が自分で名刺管理ツール「Eight」を活用しながら人脈の管理、共有をデジタルで行う体験を中心に実施されました。
体験会の中ではEightだけではなく、kintoneの主要機能についての共有もあり、セミナーを通して、社内におけるDX化を自分たちで行うきっかけとなりました。
〈内容〉
〇SFAとは何か
・Eight概要の説明
・kintone概要の説明
〇Eight基本機能の紹介
・名刺登録:スキャン・登録
・アドレス帳
・名刺アップデート
・SNS
〇kintone「営業支援パック」の体験
〇ツールのコラボレーションについて
場所: とりぎん文化会館
参加者様の声・鳥取県庁ご担当者様のコメント
参加者様の声
〇プレシニアの方向け リスキリング推進セミナー
・「アンラーニングがようやく腑に落ちた。」
・「色々なケースがある中で、考え続けなければいけないことを再認識させられました。」
・「通常のリスキリングセミナーでは、何から進めたらいいか分からないが、今回のセミナーは今後の自分にとってヒントとなると思えた。」
〇リスキリング体験講座
・「体験しながらという形式は楽しかった。」
・「実際に動かして分かる部分があった」
・「職場でも活用方法を共有し、仕事に生かしていきたいと思った。」
・「デジタルが苦手だったが、サポートが充実していて、安心して参加できた。」
・「自社でもGoogleのツールなどを活用できそうだと感じることができた。」
鳥取県庁ご担当者様のコメント
『DXを目指したリスキリングを進める上で重要なものの一つがプレシニア層のマインドです。デジタル技術を活用することで、従来のビジネスのやり方を変えたり、組織を変革する
ことは決して簡単ではないため、プレシニア層が意欲的でない場合、なかなかその組織でリスキリングは進みません。本事業に参加されたプレシニア層の方々が前向きな意識を持っていただいたことを大変嬉しく思います。今後もリスキリングの実践・定着を支援する事業を通じ、県内企業の持続的な成長に寄与していきたいと考えています。』
デジタルへのきっかけ作りと産業発展への寄与
このプロジェクトを通して、デジタルの進化の波の中で、企業が内部の教育や人材育成にもっと注目すべきであることが改めて明らかになったと思います。
デジタル技術の理解と利用するきっかけは、組織が持続的に成長していく上で欠かせない要素として浮き彫りになりました。
このプロジェクトにご参加いただいた方々の中には、以前はデジタルツールの使用をためらっていた方もいらっしゃいましたが、今回の講演とワークショップを経て、デジタル技術に対する見方が大きく変わり、業務でデジタルツールを活用しようという前向きな姿勢が見られるようになりました。
このプロジェクトはDXとリスキリングの重要性を広く伝えることができたと感じています。
単に新しいツールを紹介するだけでなく、それらをどのように実務に応用できるかを示すことで、社内のデジタル技術を実用化へと繋げる実践的な第一歩となりました。講演やワークショップを通じて、参加者の皆様は自らの業務プロセスを見直し、より効率的で効果的な業務遂行方法を見つけ出すヒントを得られたのではないかと思います。
しかし、これはあくまでスタートです。組織全体のデジタル化を進めるには、DXに対するきっかけ作りや学びと実践が不可欠になってくるため、今後も、このようなセミナーを通して、これからDX化を考えられている方々へ1つのきっかけとなれば幸いです。